コラム

資金決済法/資金移動業

改正資金決済法と収納代行(2020年12月25日付内閣府令案の公表を受けて)

以前に、「資金移動業と為替取引」というコラムで、収納代行サービスに関して、次のようにご説明しました。
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これら収納代行サービスや代金引換サービスについては、資金移動業登録の必要な取引に該当するのではないかとの議論があり、実際にも、資金決済法制定時に立法による規制が検討されました。
もっとも、ア)過去に消費者保護の見地からこれらのサービスについて重大な問題が生じたことがないことや、イ)法的規制の導入により利用者の利便性を損なう恐れがある等の強い批判を受けて、立法は見送られています。

このため、「収納代行」や「代金引換」が為替取引に該当するか否かは法律上明らかにされていませんが、資金決済法制定時の経緯に鑑みれば、①原因取引に付随して行われる資金移動(代金引換)や、②回収を行うものが代理受領権限を有する場合の当該代理受領に伴う資金移動(収納代行)については、これに該当しないと解される余地があります。
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この点について、令和2年6月5日成立の「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」による資金決済法の改正(改正資金決済法第二条の二・後記★1)によって、ルールが明確化されました。

具体的には、上記のうち、②回収を行うものが代理受領権限を有する場合の当該代理受領に伴う資金移動(収納代行)のうち、「内閣府令」で定めるものについては、為替取引に該当する(資金移動業登録をせずに営むと違法となる。)とされたのです。
これは、個人間の収納代行のうちいわゆる割り勘アプリ等の実質的には個人間送金サービスに該当するサービスについて、為替取引として規制する趣旨です。

この「内閣府令」について、金融庁から2020年12月25日付で、後記★2の案が公表されました。

この内閣府令で定める要件について、簡単なチャートにまとめたのが次の図となります。注)イメージを掴んで頂くことを目的としておりますので、正確な定義・要件は条文をご確認ください。

* 条文(内閣府令案第一条の二第2号)では信用取引により発生した(債権の回収のための資金移動である)ことを要件としていますが、よりイメージを掴みやすくするために具体例化しています。

いわゆる「割り勘アプリ」のような個人間の送金サービスが「為替取引」に該当することや、エスクローサービスが除外されることが明確になった一方で、「受取人が有する金銭債権の発生原因である契約の締結の方法に関する定めをすることその他の当該契約の成立に不可欠な関与」(内閣府令案第一条の二第3号ロ)など、範囲が明確でないものもあり、今後のリリースを注視する必要があります。

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★1 改正資金決済法第二条の二(下線筆者)
金銭債権を有する者(以下この条において「受取人」という。)からの委託、受取人からの金銭債権の譲受けその他これらに類する方法により、当該金銭債権に係る債務者又は当該債務者からの委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)その他これに類する方法により支払を行う者から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該受取人に当該資金を移動させる行為(当該資金を当該受取人に交付することにより移動させる行為を除く。)であって、受取人が個人(事業として又は事業のために受取人となる場合におけるものを除く。)であることその他の内閣府令で定める要件を満たすものは、為替取引に該当するものとする。

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★2 内閣府令案
第一条の二
法第二条の二に規定する内閣府令で定める要件は、受取人(同条に規定する受取人をいう。以下この条において同じ。)が個人(事業として又は事業のために受取人となる場合におけるものを除く。)であり、かつ、次に掲げる要件のいずれかに該当することとする。
一 受取人が有する金銭債権に係る債務者又は当該債務者からの委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)その他これに類する方法により支払を行う者(第三号において「債務者等」という。)から弁済として資金を受け入れた時(他の者に資金を受け入れさせる場合にあっては、当該他の者が弁済として資金を受け入れた時)までに当該債務者の債務が消滅しないものであること。
二 受取人が有する金銭債権が、資金の貸付け、連帯債務者の一人としてする弁済その他これらに類する方法によってする当該金銭債権に係る債務者に対する信用の供与をしたことにより発生したものである場合に、当該金銭債権の回収のために資金を移動させるものであること。
三 次に掲げる要件のいずれにも該当すること。
イ 受取人がその有する金銭債権に係る債務者に対し反対給付をする義務を負っている場合に、当該反対給付に先立って又はこれと同時に当該金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該反対給付が行われた後に当該受取人に当該資金を移動させるものでないこと。
ロ 受取人が有する金銭債権の発生原因である契約の締結の方法に関する定めをすることその他の当該契約の成立に不可欠な関与を行い、当該金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該受取人の同意の下に、当該契約の内容に応じて当該資金を移動させるものでないこと。
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