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【2023年10月施行改正景表法vol.3】ステマ規制の運用基準

vol.1ステマ規制が新設された背景は?
vol.2 ステマ規制では何が規制される?

に続く第3弾です。

はじめに

2023年10月から景品表示法によってステルスマーケティング、通称「ステマ」に対する規制が始まりました。

ステマとは、広告であるにもかかわらず、広告であることを隠し、インフルエンサー等が口コミや感想と装って宣伝することをいいます。

このコラムでは、ステマ規制の対象となる「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準について消費者庁の資料を基にご説明します。

「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の規制趣旨

「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」とは、事業者の表示であるにもかかわらず、それを明瞭にしないことにより一般消費者(以下単に「消費者」といいます。)から見ると、第三者の表示として見える(事業者の表示であることの判別が困難となる)ものをいいます。

消費者は、事業者の表示であると認識すれば、ある程度商品の表示に誇張・誇大が表示に含まれることはあり得ると考えるため、それらも含めて商品選択ができますが、それが第三者、例えば芸能人が実際には事業者から依頼されてPRとして効果をアピールしているのに、表示(投稿)上はPRとしてではなく、自分が使った感想として商品の表示に拡張・誇大を含めてしまうと、消費者はまさか事業者の表示だとは思わないので、この点において、消費者の商品選択における自主的かつ合理的な選択が阻害されるおそれがあります。

そのため、このように消費者に事業者の表示ではないと誤認される又は誤認されるおそれがある表示を規制することになりました。

告示の「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」についての考え方

告示の対象となるのは、見た限りでは第三者の表示のように見えるものが実際には事業者の表示に当たることが前提となります。

景品表示法は、事業者の表示の内容について、消費者に誤認を与える表示を不当表示として規制しています。外から見れば第三者の表示に見えるものが事業者の表示に該当するとされるのは、事業者が表示内容の決定に関与し、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合になります。

(1) 事業者が表示内容の決定に関与したとされるものについて

① 事業者が自ら行う表示

・事業者が自ら表示しているにもかかわらず第三者が表示しているかのように誤認させる表示
・事業者と一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員や、事業者の子会社等の従業員が行った事業者の商品又は役務に関する表示

② 事業者が第三者をして行わせる表示

・事業者が第三者に対して当該第三者のSNS上や口コミサイト上等に自らの商品または役務に係る表示をさせる場合
・ECサイトに出店する事業者が自らの商品の購入者等に依頼して、購入した商品について当該ECサイトのレビューを通じて表示させる場合
・事業者がアフィリエイターに委託して、自らの商品又は役務について表示させる場合
・事業者が第三者に対してある内容の表示を行うように明示的に依頼・指示していない場合であっても、事業者と第三者との間の関係性の客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性がある場合(例えば、過去に事業者が第三者の表示に対して対価を提供していた関係性がある場合等で、メSNSへの投稿を明示的に依頼しないものの、投稿した場合に今後第三者と継続的な取引をにおわせる等も事業者の表示となることがあると考えられます。)

(2) 事業者が表示内容の決定に関与したとされないものについて

事業者が第三者の表示に関与したとしても、客観的な状況に基づいて第三者の自主的な意思による表示内容と認められれば、事業者の表示には当たりません。

つまり、第三者が自らの嗜好等により、特定の商品又は役務について行う表示であって、客観的な状況に基づき第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合には、事業者の表示にはあたりません。この判断に当たっては、第三者と事業者との間で表示内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われていないか、事業者から表示内容に関する依頼や指示があるか、第三者の表示(投稿等)の前後において、事業者が第三者の表示内容に対して対価を既に提供しているか、過去に対価を提供した関係がどの程度続いていたのか等事業者と第三者との間の関係性によって判断されます。

具体的に、事業者の表示には当たらないとされる場合としては、以下のような場合等が事例として挙げられています。

・第三者が事業者の商品又は役務について、SNS等に自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合。
・アフィリエイターの表示であっても、事業者と当該アフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にある表示を行う場合。
・事業者が自社のウェブサイトの一部において、第三者が行う表示を利用する場合であっても、当該第三者の表示を意識的に抽出することなくまた、当該第三者の表示内容に変更を加えることなく、そのまま引用する場合。
・事業者が表示内容を決定できる程度の関係性にない第三者に対して表示を行わせることを目的としていない商品又は役務の提供(例えば、単なるプレゼント)をした結果、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合。

また、新聞や雑誌、放送等を業とする媒体事業者が自主的な意思で企画、編集、制作した表示については、通常、事業者が表示内容の決定に関与したといえないことから、事業者の表示とはなりません。ただし、媒体事業者の表示であっても、事業者が表示内容の決定に関与したとされる場合は事業者の表示となります。YouTuber等によるPR動画制作などがこの対象になると考えられます。

告示の「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」についての考え方

告示の「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」かどうか判断するに当たっては、事業者の表示であることが明らかになっているか(=第三者の表示であると消費者に誤認されないか)を表示内容全体から判断することになります。

消費者にとって事業者の表示であることが明らかになっていないものとしては、以下のような場合等が例として挙げられています。

・事業者の表示であることが全く記載されていない場合
・事業者の表示である旨について、部分的な表示しかしていない場合
・事業者の表示である旨を文章で表示しているものの消費者が認識しにくいような表示。
・事業者の表示であることを他の情報に紛れ込ませる場合(例えばインスタグラム等で大量のハッシュタグ「#」に紛れ込ませるなど。)。

消費者にとって事業者の表示であることが明らかであると認められるためには、表示内容全体から、事業者の表示であることが分かりやすい表示となっている必要があります。

例えば、以下の例が挙げられています。

・「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった文言による表示を行う場合。(ただし、これらの文言を表示していたとしても、表示内容全体から明らかでないと認められない場合もあります。)
・「A社から商品の提供を受けて投稿している」といったような文章による表示を行う場合。

他にも、社会通念上事業者の表示であることが明らかとなる以下のような場合等も告示対象とはならないとされています。

・放送におけるCMのように広告と番組が切り離されている表示を行う場合
・事業者の協力を得て制作される番組放送や映画等において当該事業者の名称等をエンドロール等を通じて表示を行う場合。
・事業者自身のSNSアカウントを通じた表示を行う場合。

ステマにならないために記事内容の適否や関係性の明示方法については、ある程度ケースバイケースの判断ともなりますので、迷う場合には専門家へご相談ください。

弊所では、ステマ規制に関するご相談やご依頼をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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参考:
「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準 令和5年3月28日 消費者庁長官決定

 

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