コラム

ITと知的財産権

商標権の譲渡と使用権

商標権は譲渡することができます。
このため、新しく始めようとするホームページやサービスの名称が他社の登録商標と類似している場合には、商標権者から商標権の譲渡を受けることによって、その名称を安心して使用できるようになります。

もっとも、商標権の譲渡を受ける際には、いくつか注意すべき点があります。このうち、もっとも気をつけなければならないのは、その商標権に「使用権」が設定されているか否かです。

この「使用権」には、「専用使用権」と「通常使用権」があります。「専用使用権」であれば、その設定を受けた者だけが商標を使用できる(商標権者すら使用できなくなります)のに対し、通常使用権であれば、複数の者に対して設定でき、商標権者自身も使用できるという違いがあります。

他社に「使用権」があると、商標権を取得しても、その登録商標を独占することができません。更に、「専用使用権」が設定されていれば、商標権者もその登録商標を使用できませんので、(使用料を徴収できることを除き)商標権を取得した意味がなくなってしまいます。

このため、商標権を取得する前には、その登録商標に「使用権」が設定されているいるか否かを調査する必要があります。

「専用使用権」の有無は、特許庁に備える「商標登録原簿」の閲覧を申請することで確認することができます。その登録商標に専用使用権が設定されている場合には、「商標登録原簿」の「乙区」欄に【専用使用権の設定】という記載がされています。
「通常使用権」は、登録し、「商標登録原簿」に記載することもできますが(「丙区」に記載されます)、登録しなくても効力は発生しますので、閲覧のみでは確認しきれません。このため、「通常使用権」に関しては、商標権の譲渡契約書でカバーします。即ち、契約書中で、商標権者に、「使用権を設定していない」ことを保証させることになります。

このような調査を経て、商標権の譲渡を受けることとなったら、必ず、譲渡を登録します。商標権の移転は、登録しなければ効力を生じないからです(商標法35条、特許法98条1号)。

このように、商標権の譲渡を受ける場合には、「使用権」の有無をしっかりと調査し、調査だけではカバーできない点を譲渡契約書でカバーすることが必要です。
弊所では商標権に関するご相談やご依頼をお受けしておりますので、ご気軽にお問合せください。
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