コラム

ITと知的財産権

ゲームキャラクターの画像と著作権

はじめに

近年、スマートフォン向けのゲームから派生し、テレビアニメや舞台、書籍などへのメディアミックスがされていくコンテンツが少なくありません。このようなコンテンツでは、ゲームの登場人物(キャラクター)自体が高い人気をえており、その画像が許可なく使用されることや、時には無断で商業利用されることがあります。それでは、このような、ゲームキャラクターの画像の無断使用には、著作権法上どのような問題があるのでしょうか。

 

ゲームのキャラクターは著作物にあたるのか

そもそも、ゲームのキャラクターが、著作権法で保護される「著作物」にあたるのかが問題となりえます。なぜなら、著名な裁判で、「キャラクターは著作物ではない」と判断されたことがあるからです(最判平成9年7月17日民集51巻6号2714頁・ポパイネクタイ事件)。

この判決では、キャラクターの著作物性について、次のように判断されました。

「一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。」

もっとも、この判決でいう「キャラクター」とは漫画の「登場人物の人格」を指していますので、この判決は、「登場人物の人格」は、著作物にあたらないと判断しているに過ぎません。

よって、この判決は、漫画のキャラクターのビジュアルが著作物にあたらないと判断するものではありませんので、キャラクターの画像は当然に著作物となりえますし、ゲームのキャラクターも同様です。

 

キャラクター画像の著作権

ゲームのキャラクターについては、キャラクター設定としての基本的ビジュアルが存在した上で、個々の場面等に応じて画像(・動画)が制作されます。よって、個々の画像は、基本的ビジュアルを原著作物とする二次的著作物と理解することができます。

これらの著作権は、通常、ゲームの制作会社に帰属しています。

 

原作小説があった場合

それでは、ゲームに原作小説がある場合はどうでしょうか?

この点、原作と連載漫画との関係について、裁判では、連載漫画は「原稿を原著作物とする二次的著作物である」と判断されました(最判平成13年10月25日集民 203号285頁)。二次的著作物とされると、原著作物(原作原稿)の著作権者も、二次的著作物(連載漫画)の著作権者と同一の権利を有します(著作権法28条)。

これと同様に考えると、ゲームに原作小説がある場合には、その原作小説の著作権者(小説家など)も、キャラクタービジュアルの著作権者と同一の権利を有することになります。

よって、キャラクター画像を無断使用した場合には、キャラクター画像の著作権者(ゲーム制作会社)だけでなく、原作の著作権者(小説家など)の著作権も侵害することになりえるのです。

 

キャラクターのビジュアルを模倣した場合

キャラクター画像をコピーして商用利用する場合だけでなく、キャラクター画像を真似て、自ら制作した画像などを商用利用することも著作権侵害となりえます。

まず、自ら制作したといっても、元の画像とほとんど変わらないものであれば、それは元画像の複製と変わりません。

次に、元画像から大きく変更がある場合であっても、これを見る人が元画像の「本質的な特徴を直接感得できる」場合には、著作権の一部である「翻案権」の侵害となり、やはり著作権の侵害となります。

もっとも、似たような画像で場合であっても、元画像と同一性を有する部分がありふれたものやアイデアに過ぎないものである場合には、翻案権侵害とならない場合もあります(東京地判平成20年7月4日判決・博士イラスト事件)。

 

おわりに

このように、ゲームのキャラクター画像をコピーし、または模倣して商用利用することは、ゲームの制作会社等の著作権を侵害することになり、差止や損害賠償請求の対象となりえます。

よって、これらを商用利用する場合には、権利者から適切な許諾をえる必要がありますが、ゲームが二次的著作物にあたる場合には、原作者からの許諾も得る必要がある場合がありますので、実務上注意が必要です。
弊所では知的財産権に関するご相談やご依頼をお受けしておりますので、ご気軽にお問合せください。
お問い合わせフォームはこちら

PAGE TOP