コラム

IT関連の裁判例

アフィリエイトで件数未達による損害賠償が認められた裁判

〇裁判年月日など
東京地裁 平成27年11月26日付け判決

〇事案の概要
本件は,広告主であるXがインターネット上の広告配信業務をYに委託したところ,その広告の成果としてYが保証した件数の会員獲得が達成できなかったのはYの債務不履行に当たると主張して,Yに対し,支払済みの広告料のうち成果未達成分に相当する153万1818円の損害賠償及びこれに対する契約期間終了日(履行期限)の翌日である平成27年3月15日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案です。
XとYとの業務委託契約(本件契約)の内容は、次のとおりでした。
・サービス名 セミアフィリエイト広告
・契約期間 配信開始から3か月
・設定CPA(成果1件当たりの単価) 950円(消費税別)
・保証件数 1580件
・成果地点 無料会員登録
Xは,Yに対し,平成26年12月2日,本件契約に基づき,広告料162万1080円(消費税込)を支払いました。
しかし、本件契約の契約期間である同月15日から平成27年3月14日までの間に,Yが本件契約に基づいて配信した広告によりXが獲得した無料会員登録の件数は,87件でした。
そこで、Xは,Yに対し,既払広告料のうち会員獲得の成果が未達成の件数相当分の返金等を求めました。

〇本件の争点(保証件数の未達成がYの債務不履行といえるか)
・Xの主張
本件契約は,成果保証型契約であり,Xが3か月の契約期間内に1580件の無料会員の登録を獲得することがYの保証する成果として契約内容となっていた。
・Yの主張
本件契約の内容は,契約期間が配信開始から3か月間と定められてはいるものの,契約期間内に保証件数に満たない場合には保証件数の成果が達成できるまで広告の配信を継続するというもので,Yは,Xに対し,電話と面談で提案書に記載された前記内容を説明し,Xもこれを理解した上で本件契約を締結している。

〇争点に対する裁判所の判断
「本件契約は,成果保証型広告とされており,YがXからインターネット上での広告配信業務を受託するに当たり,契約期間を3か月,保証件数を1580件と設定した上で,Xが契約期間内に保証件数の無料会員登録を獲得することをYの業務の成果として保証したものであることが認められるところ,本件契約が成果保証型広告であることが強調され,あえて契約期間及び保証件数が明示的に設定されていることからすると,かかる合意をした本件契約の当事者の合理的意思を解釈すれば,契約期間内に保証件数の成果を獲得することが本件契約上のYの債務であると解するのが相当というべきである。」
「本件契約についての提案書には,「事前に設定した販売数を成果数として確実に販売目標を実現する,目標の成果が出るまで実施を行う成果保証型広告となります。」と,事例紹介では「万が一,2000件に到達しなかった場合,追加分は頂きません。到達するまで運用を行います。」との記載があり,Yの営業担当者も同旨の説明をしたことが認められるが,これらの記載等は,Yが契約期間内に保証件数を達成できなかった場合でも,Xが配信継続を相当と認めたときには,追加料金なしで保証件数まで広告配信を継続させることができる旨をいうものと解するのが相当であり,契約期間の定めに関わらず保証件数が達成されるまで広告配信を継続すれば債務不履行責任を問われないとするYの主張は,あえて契約期間を定めた本件契約の解釈として合理性を欠くもので採用できない。」

〇コメント
アフィリエイトにおいて、営業手段として一定の成果に言及することはありえます。ただし、「成果保証」であることが契約の内容になっていれば(本件では、成果×単価が報酬額となっていてこの点からも成果保証が前提となっていると認められます。)、成果未達の場合には、債務不履行となり、損害賠償請求の対象となってしまいます。
よって、一定の成果に言及するとしても、同種事案での実績や予想数値を挙げるに留まり、「成果保証」を契約内容とはしないことが必要です。
また、Yは、契約期間内に成果未達であった場合の方便として、成果達成まで契約が継続されることになっていたとも主張していますが、「あえて契約期間を定めた本件契約の解釈として合理性を欠く」として採用されていません。
よって、仮に、このような契約とするのであれば、「契約期間」ではなく「想定達成期間」とするなど、当初期間に成果を達成することが契約内容となっていないことを契約書上でも明示しておくことが必要と考えられます。
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