コラム

資金決済法/資金移動業

家計簿アプリ事業者の登録制

家計簿アプリ事業者の登録制化
平成29年5月26日、家計簿アプリ事業者の登録制を定める規定を含む、銀行法等の一部を改正する法律が成立しました。改正された銀行法は、この日から一年前後で施行されることになります(*1)。
一口に家計簿アプリといっても、単に支出を記録しておくものや、記入内容からレシピを提案するものなど、その種類は多岐に渡ります。中でも人気を誇るのが、銀行やクレジットカードの情報を一元的に管理する機能を有するアプリです。今回の改正で対象となったのは、まさにこの種の家計簿アプリになります。

*1 法律が成立すると、奏上ののち30日以内に公布され(国会法66条)、その後施行されることになります。施行までの期間は各法律で定められており、本法律では公布から1年を越えない期間に施行することとされています。

改正の理由
かねてから、銀行やクレジットカードの情報を一元管理できるタイプのアプリに関してはセキュリティ面での危険性が指摘されていました。つまり、このようなタイプのアプリでは銀行等のユーザページへのアクセスを代行するためにユーザのログインID及びパスワードをアプリ事業者が保存することになるのですが、これが漏えいした場合に、銀行等への不正なアクセス等の危険があるのではないかと指摘されていたのです(*2)。
そこで、今回の銀行法の改正では、アプリ事業者について、金融庁への登録及び銀行等との情報提供についての契約締結をすべきものと定める等の対策が設けられました。

*2 ログインID等の漏えいによる不正なアクセスがあると、残高情報や取引履歴その他の個人情報等が盗まれる可能性があります。

家計簿アプリに関する銀行法改正点の概要
改正後銀行法では、以下の点等が定められました。
①家計簿アプリ事業者の定義づけ
→アプリ等を通しての銀行口座への出入金サービス(銀行法2条17項1号)及びアプリ等を通しての口座残高等の情報提供サービス(同2号)が、「電子決済等代行業」と定義づけられ、登録を受けてこの業務を営む者が「電子決済等代行業」と定義づけられました。
②アプリ事業者の業務に関する規定
→以下の通りアプリ事業者の各種義務が定められました。
アプリ事業者のユーザに対する情報提供ないし適切な管理体制の構築等(同法52条の61の8)
アプリ事業者のユーザに対する誠実義務(同条の61の9)、
アプリ事業者の銀行との契約締結義務(同条の61の10)、
銀行の上記契約締結に際してのアプリ事業者に課すべき基準の策定義務(同条の61の11)
③アプリ事業者への監督に関する規定
→以下の通り内閣総理大臣による実効的な監督が定められました。
帳簿書類、報告書の作成保管義務(同条の61の12、13)、
報告又は資料の提出(同条の61の14)、
立入検査(同条の61の15)、
業務改善命令(同条の61の16)、
登録取消し及び業務停止(同条の61の17)、
登録の抹消(同条の61の18)
④認定電子決済代行事業者協会の認定についての規定
→法令遵守のために会員に対する指導等を行う者として、認定電子決済代行業者協会を設ける旨定められました。
⑤罰則
→同法上の各種義務違反等につき、懲役ないし罰金が科されるものと定められました。

おわりに
本改正では、これまでなんら法的規制のなかった家計簿アプリが国の一定の監視のもとにおかれることになりました。本改正により規制が整備されれば、これまでセキュリティ面の不安からアプリ利用を躊躇していた人々が利用を開始することが考えられます。
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