業務委託契約書とは、業務を発注(委託)する側と業務を受注(受託)する側が、その業務内容や条件等を取り決めるための契約書です。
その中でも、成果物のトラブルで発注者に損害が発生した場合に、受注者が負う賠償責任について定める損害賠償に関する条項について大切なポイントをご説明します。
損害賠償の範囲
まず、損害賠償の範囲について、民法上では以下のように定められています。
(損害賠償の範囲)
第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
1項は、賠償されるべき損害の範囲に関する一般原則を定め、債務不履行から通常生ずべき損害が賠償の範囲に入ることを規定しています。
2項は、特別の事情を原因として生じた損害について定め、当事者がその特別の事情を予見すべきであったときはその事情から生ずる損害のうち、通常生ずべき損害(1項)が賠償の範囲に入ることを規定しています。
「通常生ずべき損害」(通常損害)とは、その種の債務不履行があれば、通常発生するものであると社会一般的又は取引一般的に従って考えられる(相当因果関係)範囲の損害をいいます。
契約書上、損害賠償の範囲について、発注側は受注側から以下の3つの修正を要求されることが主に考えられます。
① 損害の範囲を現実的に生じた直接かつ通常の損害に限る
② 相手方に生じた損害を賠償する(民法通り)
③ 相手方に生じた一切の損害(合理的な弁護士費用を含む)を賠償する(民法+α)
この場合、①→②→③の順に賠償範囲が広くなっていきます。
通常、損害賠償義務を負うのは受注側になるため、(発注側は代金を支払っている限り、通常は契約違反にならないため。)発注側(委託側)であれば広く、受注側(受託側)であれば狭く規定することが望ましく、受注者側としては出来れば①に修正したいと要求することが考えられます。
損害賠償の上限
また、上記の3つに加えて受注側から要求されることが多いと考えられるのは以下の4つのような「賠償上限」に関する修正です。
A. ●円を上限として
B. 委託料を上限として
C. 賠償の原因となった個別契約の金額を上限として
D. 直近●ヵ月(又は年)の取引金額を上限として
受注側から見た時には、委託料総額(B)を上限とすると賠償上限が大きすぎてしまう場合、各フェーズの委託料(C. 個別契約の金額)を上限とするように交渉することが考えられます。
まとめ
業務委託契約書を交わす取引において、損害賠償責任についてこれを制限する規定にするかどうかは発注側・受注側で対立することが多いですが、発注側においては発生する可能性ある損害を予見して、その損害を規定でカバーできているか、また受注側においては損害賠償の総額が膨大になっていないかに注意する必要があります。
損害賠償の内容は両当事者にとって公平な内容とするのが原則ですが、少なくとも契約書をチェックする際には、自社の損害賠償責任が相手方よりも重たくなっていないかに注意をし、もし自社に不利になっているようであれば、修正を求めることが望ましいです。
弊所では業務委託契約書に関するご相談やご依頼をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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