はじめに
近時、個人間決済・送金アプリが多くリリースされていますが、その一つとして、2016年11月17日にリリースされた「paymo(ペイモ)」も話題を集めています。
paymoは、いわゆる「割り勘アプリ」といえますが、従来、この分野のサービスに必要と考えられていた資金移動業登録をしていません。
それでは、なぜpaymoは、資金移動業登録をせずに、資金移動を伴うサービスを提供できるのでしょうか?本コラムでは、paymoの利用規約から、その理由をご説明したいと思います。
資金移動業にかかる規制
資金移動業については、「資金移動業登録が必要な『為替取引』とは何か」とのコラムでご説明していますので、詳しくは、こちらをご覧ください。
要するに、物理的な方法(書留で現金をおくるなど)以外の方法で送金することを「為替取引」といい、このような為替取引を銀行等以外の事業者が行うには、「資金移動業」の登録が必要となるのです(資金決済法37条)。
資金移動業登録には、高度な組織的整備や財産的基盤が必要とされるため、登録自体のハードルも、相当程度高いといえます。これに加えて、「資金移動業と犯罪収益移転防止法による本人確認義務等」とのコラムでご説明したとおり、「資金移動業」と評価されることで、犯罪収益移転防止法の規制も受けることになります。
資金移動業とは異なる「収納代行」について
このような資金移動業に対して、収納代行サービスとは、商品やサービスの提供者のために、第三者が料金を受け取るサービスをいい、一般的には、公共料金や通信販売の支払いをコンビニエンスストアなどで行う場合に用いられるサービスを指します。
これら収納代行サービスについては、資金移動業登録の必要な取引に該当するのではないかとの議論があり、実際にも、資金決済法制定時に立法による規制が検討されましたが、本コラム執筆時点(2017年4月20日)では立法は見送られています。
このため、サービスが「収納代行」(回収を行うものが代理受領権限を有する場合の当該代理受領に伴う資金移動)にあたれば、資金移動業にかかる規制を受けないと解釈することができます。
paymoのサービス
paymoの利用規約(AnyPay 利用規約のpaymoに関する特約)第7条(収納事務)は、その第1項にて、「当社は、当社所定の決済事業者又は収納代行業者から入金される対象債権にかかる代金を、代表会員を代理して受領するものとします。」と規定し、paymoのサービスが収納代行にあたることを宣言しています。
また、このような収納代行にあたることを担保するために、レシートの添付を義務付けるなどの工夫をしています。
このように、paymoは、収納代行にあたるため資金移動業にはあたらない、とのロジックのもとに制度設計されたサービスであると考えられます。
ユーザーのリスク
このように、paymoの法的仕組みは理解できますが、ユーザーにとっては一定のリスクがあるといえます。その理由は次のとおりです。
資金移動業が厳格な規制を受ける理由としては、移動中の資金の保全の必要性があります。資金移動業者は、送金途中にあり滞留している資金の100%以上の額を資産保全(供託等)しなければなりません。これが、万が一、送金中に事業者が倒産等した場合の担保になります。
これに対して、paymoのサービスからすれば、paymoにも多額の滞留資金が生じることが想定されますが、これには、供託金などの担保金がありません。このため、paymoの事業者が万が一倒産などした場合に、送金・滞留中の資金がユーザーに返還される可能性は、資金移動業登録をしている事業者に比べて格段に低いといわざるをえません。
これらを考えると、ユーザーにとっては、paymoのサービスは、資金移動業登録をしているサービス事業者のものと比べて、一定のリスクがあるものと考えられます。
おわりに
このように、paymoのサービスは、磐石とまではいえないものの、「資金移動業登録と為替取引」のコラムでご説明したように、資金移動業登録を回避しつつ、同種サービスを始めるための一つの方策といえます。
今後、個人間送金・決済の新たなサービスを展開しようとする事業者の方々が、このサービスの仕組みを踏まえて、更に画期的アイデアを出されることを期待します。
弊所でも資金移動業登録申請サポートを行っておりますので、以下もぜひご覧ください。
※追記
2019年5月でpaymoサービス終了済み