コラム

インターネットと個人情報

匿名加工情報に求められる匿名化の程度とは

*本コラムは令和4年4月1日施行の改正個人情報保護法を前提にしています(2022年5月16日追記)。

はじめに

2017年5月30日施行の改正個人情報保護法で新設された匿名加工情報については、「ビッグデータの流通を可能にする匿名加工情報とは」や「匿名加工情報と統計情報の違いは何か」で説明してきました。
それでは、実際に匿名加工情報を作成し、これを第三者へ提供するためには、自社で保有する個人データをどこまで匿名化する必要があるのでしょうか?

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匿名加工情報の適切な加工

まず、個人情報保護法では、「特定の個人を識別すること」と「個人情報を復元すること」ができないようにする必要があると定めています。

これを受けて、個人情報の保護に関する法律施行規則第34条では、次の5つの基準を設けています(個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)3-2-2参照。)。

(1) 特定の個人を識別することができる記述等の削除・置き換え
例)氏名の削除、住所を市町村までに置き換え

(2)個人情報に含まれる個人識別符号(マイナンバー等)の全部削除・置き換え
例)マイナンバーの全部削除

(3)個人情報と連結する符号(ID、ナンバーなど)の削除・置き換え
例)管理ナンバー、IDの全部削除

(4)特異な記述等を削除・置き換え
例)症例数の極めて少ない病歴を削除する、年齢が「116歳」という情報を「90歳以上」に置き換える

(5)前各号に掲げる措置のほか、適切な措置
例)移動履歴を含む個人情報データベース等を加工の対象とする場合において、自宅や職場などの所在が推定できる位置情報(経度・緯度情報)が含まれており、特定の個人の識別又は元の個人情報の復元につながるおそれがある場合に、推定につながり得る所定範囲の位置情報を削除する。(項目削除/レコード削除/セル削除)

個人情報保護法第 43 条(第 1 項)
1 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報(匿名加工情報データベース等を構成するものに限る。以下この章及び第六章において同じ。)を作成するときは、特定の個人を識別すること及びその作成に用いる個人情報を復元することができないようにするために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に従い、当該個人情報を加工しなければならない。
個人情報保護委員会規則第 34 条
法第43条第1項の個人情報保護委員会規則で定める基準は、次のとおりとする。
(1) 個人情報に含まれる特定の個人を識別することができる記述等の全部又は一部を削除すること(当該全部又は一部の記述等を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。
(2) 個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削除すること(当該個人識別符号を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。
(3) 個人情報と当該個人情報に措置を講じて得られる情報とを連結する符号(現に個人情報取扱事業者において取り扱う情報を相互に連結する符号に限る。)を削除すること(当該符号を復元することのできる規則性を有しない方法により当該個人情報と当該個人情報に措置を講じて得られる情報を連結することができない符号に置き換えることを含む。)。
(4) 特異な記述等を削除すること(当該特異な記述等を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。

実際の運用

取引店舗や勤務先などの具体名については、単体では個人の特定に至らないものでも他の情報又は外部情報と突合することによって個人が特定される可能性があるため、通常は加工なしで用いられることはありません。
実際の運用の多くでは、以下のように一般的情報を削除・置き換えした上で、そのデータに特有の情報を付加して匿名加工情報として作成しています。
これらを全体として検討し、「特定の個人を識別すること」と「個人情報を復元すること」ができないようになっているか検討が必要です。

氏名・電話番号・会員ID→削除
年齢→生年月まで、5歳刻みなど
性別→加工なし
住所→都道府県まで、市区単位まで
職業→職種・業種
契約・取引年月日→年月まで

おわりに

企業が保有しているデータの中には、他の企業にとって非常に有用なものもあり、イノベーションを生み出すという観点からも、データの流通は重要です。
匿名加工情報制度については、匿名化の程度が一義的ではないことや匿名化の負担等から想定ほどに活用されてこなかったともいわれていますが、今後施行される仮名加工情報では第三者提供に制限があるため、あらためて制度を見直し、活用を検討することが考えられます。

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