*本コラムは令和4年4月1日施行の改正個人情報保護法を前提にしています。
はじめに、法第33条第1項に「本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データの電磁的記録の提供による方法その他の個人情報保護委員会規則で定める方法による開示を請求することができる」と定められており、顧客から本人が識別される保有個人データの開示(存在しないときにはその旨を知らせることを含む。)を求められた場合、原則として、事業者は、本人に対し、遅滞なく開示しなければなりません。
*「個人データの開示請求を受けた際の対応について」の記事はこちらをご覧ください。
では、事業者が、保有個人データについて本人からの開示請求を受けた場合、開示に係る費用(郵送費等)を本人に請求することはできるのでしょうか。
法第32条第3項では、事業者は、保有個人データに関し「手数料の額を定めたときは、その手数料の額」について「本人の知り得る状態に(本人の求めに応じて遅滞なく回答をする場合を含む。)に置かなければならない」と、定められており、手数料の額をあらかじめ定め公表することが義務付けられています。
また、法第38条第1項には「開示の請求を受けたときは、当該措置の実施に関し、手数料を徴収することができる」と定められており、開示請求に係る手数料の請求を本人にすることができます。
手数料を徴収する場合については、「実費を勘案して合理的であると認められる範囲内において手数料の額を定めなければな」りません(同条第2項)。
手数料の額については、実費を予測して平均的単価を算出して定めることが望ましく、例えば、郵便で開示請求に応じる場合には、配達証明付の書留料金を勘案するなど適切な金額を検討することが考えられています(「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A (以下、「Q」といいます。)9-27)。ですので、開示請求に係る手数料により利潤を得ることはできません(Q9-29)。
*ただし、開示手数料を徴収したのに結果として開示しなかった場合について、手数料を定めた法第38条は、現に開示を行ったか否かにより特に区別していないので、必ずしも返還する義務は生じないとされています(Q9-28)。