コラム

インターネットと個人情報

不採用者に履歴書を返却すべき?履歴書に関する事業者の義務について

*本コラムは令和4年4月1日施行の改正個人情報保護法を前提にしています。

会社の採用面接で不採用にした応募者から、「履歴書を返却してほしい」と提出された履歴書の返却を求められた場合、個人情報取扱事業者として返却に応じなければならないのでしょうか。

「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A9-20に沿ってみていきます。

個人情報保護法では、本人からの請求による保有個人データの削除(法第34条)、利用の停止または消去(法第35条)に関する規定は定められていますが、履歴書等の受け取った書類を返還する義務はないので、提出された履歴書を返却する義務もないと考えられています。

しかし、応募者本人から、履歴書に記載された本人の情報について、保有個人データに該当する場合に、再応募への対応等のための合理的な期間が経過した後、利用する必要がなくなった場合に該当するとして利用停止等の請求を受けたときには、当該請求に応じる義務があると考えられています(法第35条第6項)。

法第35条第6項 個人情報取扱事業者は、前項の規定による請求を受けた場合であって、その請求に理由があることが判明したときは、本人の権利利益の侵害を防止するために必要な限度で、遅滞なく、当該保有個人データの利用停止等又は第三者への提供の停止を行わなければならない。ただし、当該保有個人データの利用停止等又は第三者への提供の停止に多額の費用を要する場合その他の利用停止等又は第三者への提供の停止を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。

なお、法第22条では、個人データの消去についての努力義務が明記されているので、事業者は、個人データを利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければなりません。したがって、実務では、基本的に保有し続ける理由がない情報については、随時廃棄処分等をする等の対応が必要と考えられます。

法第22条 個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。

 

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