コラム

システム開発の法律

システム開発契約の著作権関係について

システム開発契約を締結する際、ソフトウェア等の納入物に関しての特許権、著作権、ノウハウ等の知的財産権が発生する場合があります。そのため、業務の遂行過程で生じる知的財産権の帰属については、契約で明確に規定しておく必要があります。

特に、発注側の場合に立つと、受注側である取引相手との交渉では、著作権帰属について以下のような修正要求をされることが多いと思います。
(1) 全て受注側に帰属する。
(2) 受注側又は第三者が従前から保有していた著作物の著作権及び汎用的な利用が可能なプログラムの著作権は受注側に帰属する(これら以外は発注側に帰属する)。

この場合に、どのような取引が予定されているかによって著作権の全部を受ける必要があるか、もしくは(1)や(2)への譲歩が可能かどうかを検討する必要があります。

著作権の譲渡を受けられない場合でも、成果物の自己利用に必要な範囲では利用許諾(著作権法第63条)されることが通例なので、著作権譲渡を受ける必要があるかどうかの線引きは、成果物を他社へ譲渡・貸与する可能性があるかが大きな基準となります。

経済産業省のモデル契約書では、次の3つの案が紹介されています。
本コラムでは、経済産業省のモデル契約書に基づき説明していきます。

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【A案】(ベンダにすべての著作権を帰属させる場合)

(納入物の著作権)
第〇条 納入物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)は、甲又は第三者が従前から保有していた著作物の著作権を除き、乙に帰属するものとする。
2. 甲は、納入物のうちプログラムの複製物を、著作権法第47条の3 に従って自己利用に必要な範囲で、複製、翻案することができるものとする。また、本件ソフトウェアに特定ソフトウェアが含まれている場合は、本契約及び個別契約に従い第三者に対し利用を許諾することができる。乙は、かかる利用について著作者人格権を行使しないものとする。

第1項は、納入物に関する著作物の著作権については、発注側(ユーザ)又は第三者が従前から保有していた著作権を除いて、受注側(ベンダ)にすべての著作権を帰属させるというものです。
「全ての著作権を譲渡する」と規定するだけでは、著作権の全部を譲り受けることはできず、「著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)」と記載する必要があります。著作権法では、譲渡人の保護規定があり(著作権法第61条第2項)、単に著作権を譲渡すると契約しただけでは、二次著作物の創作権(第27条)及び二次著作物の利用権(第28条)の権利は権利者に留保したものと推定されるためです。

同様に、A案・B案・C案のどの場合であっても、これらの権利については、特掲されていなければ譲渡人に留保したものと推定されるため、注意が必要です。

(著作権の譲渡)
第六十一条 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。

(翻訳権、翻案権等)
第二十七条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
第二十八条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

第2項は、本件ソフトウェアに関して、著作権法第47条の2に基づき、発注側が行う自己利用に必要な範囲での複製又は翻案について定めています。また、一定の第三者に利用をさせることを個別契約の目的として特掲した上で開発された特定ソフトウェアについては、当該第三者に対しても利用許諾ができるというものです。

第四十七条の三 プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において実行するために必要と認められる限度において、当該著作物を複製することができる。ただし、当該実行に係る複製物の使用につき、第百十三条第五項の規定が適用される場合は、この限りでない。
2 前項の複製物の所有者が当該複製物(同項の規定により作成された複製物を含む。)のいずれかについて滅失以外の事由により所有権を有しなくなつた後には、その者は、当該著作権者の別段の意思表示がない限り、その他の複製物を保存してはならない。

【B案】(汎用的な利用が可能なプログラム等の著作権をベンダへ、それ以外をユーザに権利を帰属させる場合)

(納入物の著作権)
第〇条 納入物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。以下同じ。)は、乙又は第三者が従前から保有していた著作物の著作権及び汎用的な利用が可能なプログラムの著作権を除き、甲より乙へ当該個別契約に係る委託料が完済されたときに、乙から甲へ移転する。なお、かかる乙から甲への著作権移転の対価は、委託料に含まれるものとする。
2. 甲は、著作権法第47条の2に従って、前項により乙に著作権が留保された著作物につき、本件ソフトウェアを自己利用するために必要な範囲で、複製、翻案することができるものとし、乙は、かかる利用について著作者人格権を行使しないものとする。また、本件ソフトウェアに特定ソフトウェアが含まれている場合は、本契約及び個別契約に従い第三者に対し利用を許諾することができるものとし、かかる許諾の対価は、委託料に含まれるものとする。

第1項は、受注側の著作権について発注側に譲渡するというものです。
ただし、受注側が将来のソフトウェア開発の際に再利用できるように、汎用的な利用が可能なプログラムについての著作権は受注側に留保されます。この場合、本契約の秘密保持義務に反しない限り、他のソフトウェア開発においても汎用プログラム等を再利用することが可能となります。
第2項後文では、許諾の対価について定めています。著作権が移転した場合、著作権の価値に見合った対価が支払われる必要があります。モデル契約書では、開発に関する委託料に含める方法となっています。

【C案】(汎用的な利用が可能なプログラム等の著作権をベンダへ、それ以外を共有とする場合)

(納入物の著作権)
第〇条 納入物うち本件業務によって新たに生じたプログラムに関する著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)は、汎用的な利用が可能なプログラムの著作権を除き、個別契約において定める時期(選択案1 当該個別契約に係る委託料が完済されたとき 選択案2 納入物の検収完了時)をもって、甲及び乙の共有(持分均等)とし、いずれの当事者も相手方への支払いの義務を負うことなく、第三者への利用許諾を含め、かかる共有著作権を行使することができるものとする。なお、乙から甲への著作権移転の対価は、委託料に含まれるものとする。また、乙は、甲のかかる利用について著作者人格権を行使しないものとする。
2. 甲及び乙は、前項の共有に係る著作権の行使についての法律上必要とされる共有者の合意をあらかじめこの契約により与えられるものとする。
3. 甲及び乙は、相手方の同意を得なければ、第1項所定の著作権の共有持分を処分することはできないものとする。

第1項は、【B案】同様、本契約の秘密保持義務に反しない限り、他のソフトウェア開発においても汎用プログラム等を再利用することが可能となりますが、汎用的な利用が可能なプログラム以外の部分については受注側・発注側間で著作権を2分の1ずつ共有する規定となっています。
第2項は、共有著作権を行使する場合は全員の合意が必要(著作権法第65条第2項)なところ、あらかじめこれに合意する規定となっています。
第3項は、共有著作権については、その持分を処分できない(同第1項)ため、これについて確認する規定です。

(共有著作権の行使)
第六十五条 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(以下この条において「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない。
2 共有著作権は、その共有者全員の合意によらなければ、行使することができない。

受注側と発注側は、著作権の有効活用と受注側の競争力の保持を考慮した上で、上記の内最も適切な規定を選択して、基本契約に規定しておく必要があります。

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参考

経済産業省商務情報政策局情報処理振興課「「情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会」~情報システム・モデル取引・契約書~(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)〈第一版〉」平成19年4月pp.95-97

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