コラム

ウェブサービスと法律

Googleサジェストへの対策:削除請求は裁判で認められる?

はじめに
Googleサジェストとは、Googleの検索ボックスにキーワードを入力した際に、一緒に検索されやすいワードが自動で表示される機能です。このような機能は、Googleだけでなく、他の検索事業者やウェブサービスでも提供されています。
このような機能は、ユーザーの検索を支援する有用なものですが、場合によっては、サジェストされるワードが「逮捕」「前科」「倒産」のようなネガティブなワードである場合、社会的評価を下げることにもなりかねません。
それでは、自らの名前に関連してネガティブなワードがサジェストされている場合、裁判で検索事業者(例えばGoogle)に対してサジェストワードの削除を求めることはできるでしょうか?
(各検索事業者の多くはサービス内に削除手続きを設けていますが、本コラムではそれらの説明は割愛します)

サジェストの仕組み
サジェストは、一般的に、キーワードと一緒に検索されるワード(キーワードとセットで大量に検索されているワード)を自動的に表示しています。この他に、検索事業者によっては、当該ワードが含まれるウェブページの数(多くのウェブページが当該ワードを含んでいる)も影響しているといいます。

侵害されている権利
削除を求めるには、自らの権利が侵害されていることが必要です。これまでのところ、日本の最高裁判所では、EU司法裁判所で認められた「忘れられる権利」が認められたことはありません。このため、侵害されている権利としては、既に判例上認められている名誉権又はプライバシー権を主張することになります。

権利の侵害といえるか
次に、サジェストによって名誉権又はプライバシー権が侵害されていることが必要です。
たしかに、自らの氏名をキーワードとして、「逮捕」「前科」「倒産」といったワードがサジェストされた場合、その本人が逮捕されたことがある、又は前科があるのではないかとの印象を与えることは否めません。
しかし、例えば「前科」というワードのみでは、前科があるのか、ないのかも分かりません。「前科がない」という事実は、通常、名誉毀損にもプライバシー侵害にもあたりません。このため、氏名+「前科」というのみでは、権利侵害があったと認められることは難しいといえます。
実際に、これまで、サジェストされたワードの削除を認めた高等裁判所・最高裁判所の裁判例は見当たりません。

おわりに
このように、Googleサジェストへの対策への対策としては、残念ながら、Googleへ削除請求しても裁判で認められる可能性は相当程度低いといえます。このため、ア)元ウェブサイトに対する対応(削除請求など)、イ)検索事業者内の申告フォームによる対応などが比較的有効といえます。

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