コラム

IT関連の裁判例

BullPuluタピオカ事件

裁判年月日など

知財高裁令和2年9月16日付け判決

事案の概要

本件は、X(スターバックス・コーポレーション)が、Y(株式会社Bull Pulu)の商標(以下「本件商標」といいます。)について、特許庁に商標登録無効審判を請求したものの審決にてこれが退けられた(以下「本件審決」といいます。)ため、あらためてYに本件審決の取消しを求めて提訴した事案です。

本件審決の概要(本コラムに関する部分)は以下のとおりです。

本件商標(Bull Puluの商標)と引用商標(スターバックスの商標)とは、いずれも緑色の二重円環図形を有する点において共通するものの、独立して自他商品及び自他役務の識別標識として機能し、取引に資されるとはいい難く、両商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから,本件商標は,商標法4条1項11号に該当しないこと。

また、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する需要者をして、X使用商標を連想、想起させることはなく、その商品及び役務をX商品・役務、あるいはXと経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、その商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれはないから、本件商標は、同項15号に該当しないということ。

*商標法4条1項11号
当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
*商標法4条1項15号
他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

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本件の争点

1.商標法4条1項11号該当性の判断の誤りについて

・Xの主張

需要者の認識を測るアンケート調査について
本件緑色円環配置構成についての需要者の認識を測ることを目的とし、日本全国に居住する20歳から69歳までの男女552名を調査対象者として、2日間にわたりインターネットを通じて行われたアンケート調査において、80%以上の回答者が本件標章からXを想起したという事実は、需要者はXの商品及び役務に使用されてきた引用商標全体の中から本件緑色円環配置構成(緑色の二重の円環並びに内側の円環の帯状部分に白抜きの文字及び図形を配した構成)をその特徴的な部分として捉え、本件緑色円環配置構成が引用商標を含む原告の商標を想起するにあたっての鍵となる特徴であることを意味する。

本件商標と引用商標の類似について
本件商標と引用商標は、本件緑色円環配置構成を有する点で外観において共通し、観念においても同一又は類似すること、さらに、商標の視覚的な全体構成が、文字部分の違いや中心部の図形の違いという細部における差異よりも需要者に強い影響を与えていることを考慮すると、本件商標と引用商標を本件商標の指定商品又は指定役務に使用するときは、出所の混同を生ずるおそれがあるといえるから、両商標は、全体として類似する。

・Yの主張

本件アンケート調査について
本件アンケート調査は、外食産業に関する複数の質問をした後に、「この画像はある会社が運営するお店の設備やお店で販売する商品の図柄の一部を抜き出して加工したものです。」、「元々の図柄では,円の中心部分に絵があり,緑色の輪の部分には会社名が特定できる白い文字が表示されていましたが,下記の画像では,絵の部分を白く塗りつぶし,文字の部分にはモザイク処理を施し,会社名が読み取れないようにしてあります。」との前提の記載を付した上で、本件標章の画像について、「この画像を見て,なんと言う会社またはお店の名前を思い浮かべましたか。」との質問をしたものであり、回答者は、上記前提の記載によって、実在の外食産業として存在し、その中心部分に絵があり、緑色の輪の部分に会社名が特定できる白い文字が表示されているという標章を記憶の中から思い出し、その結果、Xの会社名を記載しているにすぎず、いわば連想ゲームにおけるクイズの回答をしているにすぎない。

本件商標と引用商標の対比について
引用商標は、緑色又は黒色の二重円内の上段に「STARBUCKS」、下段に「COFFEE」の各文字及び左右に星形の図形を白抜きで表し、二重円内の中央に、周囲の色と同一色で大きく表された抽象的に図案化された冠を着けた女性の図形を配した構成からなるところ、円環部分(二重円内)に文字が配置された図形は、ありふれたものであることからすると、引用商標における本件緑色円環配置構成は、特徴的部分であるということはできないから、要部に当たらない。
本件商標は、緑色の二重円内の上段に「BULLLPULU」、下段に「TAPIOCA」の各文字及び左右に丸印を白抜きで表し、二重円内の中央に、周囲の色とは異なる白色で写実的に大きく表された犬の図形とその犬の図形の影を左側に配した構成からなるところ、本件商標における「緑色の二重円内の上段に「BULLLPULU」、下段に「TAPIOCA」の各文字及び左右に丸印を白抜きで表した構成も、これと同様に要部に当たらない。

2.商標法4条1項15号の該当性の判断の誤りについて

・Xの主張

本件商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合、需要者において、本件緑色円環配置構成に着目し、引用商標が連想され、Xの業務に係る商品又は役務、Xと経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがある。

・Yの主張

本件商標をその指定商品又は指定役務について使用しても、取引者、需要者をして、その商品又は役務が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはない。

争点に対する裁判所の判断

「Xが主張する引用商標における本件緑色円環配置構成は,引用商標中の具体的な構成部分そのものではなく,本件円環部分から抽出した上位概念化した要素としての構成及び配置の態様をいうものであり,緑色の帯状の円環内における白抜きの文字が「STARBUCKS」及び「COFFEE」の文字とは異なる文字である場合や白抜きの図形が星印以外の図形であっても,本件緑色円環配置構成に含まれることになるが,引用商標に接した需要者において,このような上位概念化した要素としての構成及び配置の態様をイメージし,それが記憶に残るものと認めることは困難である。」

「本件アンケート調査には,本件標章について,元々の図柄では,円の中心部に絵があり,緑色の輪の部分には会社名が特定できる白い文字が表示されていたが,本件標章の画像では,絵の部分を白く塗りつぶし,文字部分にはモザイク処理を施し,会社名が読み取れないようにしてある旨の説明が付されているところ,上記説明は,本件標章に接した需要者が視覚によって認識し,又は想起することができない内容を文章によって誘導するものであって適切なものではない。」

「引用商標が,平成23年3月末当時において原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして著名であり,引用商標の構成中の本件円環部分は全体として需要者に対して強い印象を与えるものであったことは認められるが,このことと本件アンケート調査の結果から,引用商標における本件緑色円環配置構成が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されており,周知著名であったものと認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。」

「本件商標の要部である「BULLPULU」の文字部分と引用商標の要部である「STARBUCKS」の文字部分とを対比するに,前記ア及びイの認定事実に照らすと,上記各文字部分は,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相違するものである。
そうすると,本件商標と引用商標が本件商標の指定商品又は指定役務に使用されたとしても,その商品又は役務の出所の誤認混同が生ずるおそれがあるものと認められないから,本件商標と引用商標は,全体として類似していると認めることはできない。」

コメント

直感的には、多くの人が、本件商標(BULLPULU)は引用商標(STARBUCKS)に似ているという印象を持つと思われます。
これに対して、本判決は、両者が「類似していると認めることができない。」と判示しました。
その判断過程として、引用商標(STARBUCKS)の要部(重要な部分)はそれぞれの文字部分であり、デザイン=「本件緑色円環配置構成」は、要部ではない(本判決では「上位概念」としています。)とした点が注目されます。
その結果、「BULLPULU」の文字部分と「STARBUCKS」の文字部分を比較して、類似していないと判断したものです(文字部分のみを比較すれば当然類似していません)。
同種事例における判断の先例として、抑えておくべき裁判例といえます。

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