はじめに
職業安定法の改正により、平成30年1月1日から、求人・求職情報を提供する事業について一定のルールが定められています。それでは、求人・求職情報を提供するサービスを展開する場合、どのようなことに気をつける必要があるのでしょうか。
「募集情報等提供」とは
「募集情報等提供」とは何かについては、職業安定法の4条6項に定められています。
この法律において「募集情報等提供」とは、労働者の募集を行う者若しくは募集受託者(第三十九条に規定する募集受託者をいう。以下この項、第五条の三第一項及び第五条の四第一項において同じ。)の依頼を受け、当該募集に関する情報を労働者となろうとする者に提供すること又は労働者となろうとする者の依頼を受け、当該者に関する情報を労働者の募集を行う者若しくは募集受託者に提供することをいう。
要するに、次の2つが「募集情報等提供」にあたります。
①求人企業の募集情報を求職者へ提供すること
②求職者の情報を求人企業へ提供すること
ただし、あくまで「情報提供」に留まらなければなりません。関与の程度が「情報提供」を超えて「あっせん」に至る場合には、その行為はもはや「情報提供」ではなく「職業紹介」にあたり、異なる規制に服することになります。
他方で、職業安定法は「雇用」分野を規制するものですので、「業務委託」に関する情報提供サービスについては同法の適用はありません。
「募集情報等提供」事業に関する職業安定法上の定め
この「募集情報等提供」事業については、職業安定法は、42条2項と42条の2で次のように定めています。
(募集内容の的確な表示等)
第四十二条
○1 (略)
○2 募集情報等提供事業を行う者は、労働者の募集を行う者若しくは募集受託者又は労働者となろうとする者の依頼を受け提供する情報が的確に表示されたものとなるよう、当該依頼をした者に対し、必要な協力を行うように努めなければならない。
(労働者の募集を行う者等の責務)
第四十二条の二 労働者の募集を行う者及び募集受託者並びに募集情報等提供事業を行う者は、労働者の適切な職業選択に資するため、それぞれ、その業務の運営に当たつては、その改善向上を図るために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
要するに、募集情報等提供事業者は、情報が的確に表示されるように依頼者へ協力を求めること(42条2項)、及び業務を改善向上させること(42条の2)について努力義務を負っているということになります。
指針、業務運営要領による具体化
募集情報等提供事業に関する規制は、「指針」(*1)において具体化され、これが業務運営要領(*2)にまとめられています。
*1 職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示、労働者の募集を行う者等の責務、労働者供給事業者の責務等に関して適切に対処するための指針(平成 11 年労働省告示第 141 号)(最終改正 平成 31 年厚生労働省告示第 122 号))
*2 募集情報等提供事業の業務運営要領
まず、募集情報の提供にあたっては、次の点に注意する必要があります。
(一) 募集情報等提供事業を行う者は、労働者の募集を行う者又は募集受託者の依頼を受け提供する情報(以下「募集情報」という。)が次のいずれかに該当すると認めるときは、当該募集情報を変更するよう労働者の募集を行う者又は募集受託者に依頼するとともに、労働者の募集を行う者又は募集受託者が当該依頼に応じない場合は当該募集情報を提供しないこととする等、適切に対応すること。
イ 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的の募集情報
ロ その内容が法令に違反する募集情報
ハ 実際の従事すべき業務の内容等と相違する内容を含む募集情報
(二) 募集情報等提供事業を行う者は、募集情報が(一)のイからハまでのいずれかに該当するおそれがあると認めるときは、労働者の募集を行う者又は募集受託者に対し、当該募集情報が(一)のイからハまでのいずれかに該当するかどうか確認すること。
(三) 募集情報等提供事業を行う者は、労働者の募集を行う者又は募集受託者の承諾を得ることなく募集情報を改変して提供してはならないこと。
次に、募集情報等提供事業を営むにあたっては、次の点に注意する必要があります。
(一) 募集情報等提供事業を行う者は、相談窓口の明確化等、当該事業に係る労働者となろうとする者並びに労働者の募集を行う者及び募集受託者からの苦情を迅速、適切に処理するための体制の整備及び改善向上に努めること。
(二) 募集情報等提供事業を行う者は、労働者となろうとする者の個人情報の収集、保管及び使用を行うに当たっては、第四の一を踏まえること。また、募集情報等提供事業を行う者は、第四の二を踏まえ、秘密に該当する個人情報の厳重な管理等、労働者となろうとする者の個人情報の適正な管理を行うこと。
(三) 募集情報等提供事業を行う者は、募集に応じた労働者から、その募集に関し、いかなる名義でも報酬を受けてはならないこと。
(四) 募集情報等提供事業を行う者は、労働争議に対する中立の立場を維持するため、同盟罷業又は作業所閉鎖の行われている事業所に関する募集情報の提供を行ってはならないこと。
まとめ
このように、募集情報等提供事業については、他の情報提供・マッチングサービスとは異なり、一定の法的な規制が設けられています。
よって、自社のサービスが「募集情報等提供」にあたるか否か、あたる場合には規制に合致しているかについて、きちんと検証し、対応していくことが必要です。