*本コラムは令和4年4月1日施行の改正個人情報保護法を前提にしています(2022年5月16日追記)。
はじめに
2017年5月30日に施行された改正個人情報保護法で、「匿名加工情報」の制度が創設されました。もっとも、「匿名加工情報」については、現在でもあまり浸透しておらず、以前から個人情報の利用目的の一つとされてきた「統計情報」との違いが分かりにくいとの指摘もあります。
よって、以下では「匿名加工情報」の概要とともに、「統計情報」との違いについて説明します。
「匿名加工情報」とは
「匿名加工情報」とは、要するに、個人情報を、特定の個人を識別できないように(かつ復元することもできないように)加工して作成された情報です。
例えば、個人情報データベースから、氏名を削除したり住所や生年月日等を抽象化することで、特定の個人を識別できないように加工して作成されます。
匿名加工情報の作成方法については、経済産業省からマニュアルが公表されており、参考になります(「事業者が匿名加工情報の具体的な作成方法を検討するにあたっての参考資料(「匿名加工情報作成マニュアル」)Ver1.0」平成28年8月)。
このような「匿名加工情報」については、個人情報の第三者提供の例外として、本人の同意なく第三者へ提供することが可能となりますが、その取扱いについては、事業者に一定の義務が課されています(個人情報保護法43条~46条)。
「匿名加工情報」制度の背景
個人を識別できないように加工してあれば「個人情報」ではないから、そもそも個人情報の第三者提供にあたらないのではないかとの考えがうかびます。
しかし、「個人情報」にあたるか否かについては、「提供元」を基準として考えるべきと解されています。つまり、「提供元」を基準として、その情報が「個人情報」にあたるか否かを評価するということです。
そうすると、匿名加工した情報であっても、「提供元」では、他の情報(加工前の情報)と照合すれば個人を識別できるため、そのような情報も個人情報に該当してしまうのです。
このような理解を背景に、パーソナルデータの利活用推進のために創設されたのが「匿名加工情報」制度といえます。
「統計情報」との違い
これに対して、「統計情報」というのは「複数人の情報から共通要素に係る項目を抽出して同じ分類ごとに集計して得られるデータであり、集団の傾向又は性質などを数量的に把握するもの」と定義されます。「集計」後のデータである点で「匿名加工情報」と異なります。
もっとも、統計情報のサンプルが非常に少ない場合や、項目の定義によっては、個人が特定できてしまう可能性もあるため、注意する必要があります。
この「統計情報」については、個人データ(個人情報)でも匿名加工情報でもないため、本人の同意なく第三者提供も可能となります。
<匿名加工情報の例>
住所 年令 性別 サービスの利用回数
1 東京都 20代 男 2
2 神奈川県 40代 女 5
3 千葉県 30代 女 10回以上
4 埼玉県 60代以上 男 1
<統計情報の例>
1) 居住地別
東京都 50人
神奈川県 30人
千葉県 20人
2 )年代別
20代 10人
30代 30人
40代 40人
おわりに
匿名加工情報については、現段階ではまだ十分に浸透しているとはいえません。もっとも、法的義務はそこまで高いものではなく、匿名加工情報の利活用方法も確立してきており、敷居は低くなってきているといえます。
他方、パーソナルデータの利活用という点では、あらためて「統計情報」に着目することも考えられます。
自社が保有する情報をどのようなかたちで生かすことができるか、ぜひご検討ください。
弊所では個人情報保護法に関するご相談やご依頼をお受けしておりますので、ご気軽にお問合せください。