コラム

ITと知的財産権

修理・リメイクしたブランド品の販売は商標権を侵害するか

修理・リメイクしたブランド品の販売

バッグや時計といったブランド品については、正規代理店を通じて修理ができるほか、より安価で請け負う業者へ修理を依頼することもできます。また、故障したものを修理するだけでなく、自分の好きなようにリメイクすることもあります。
このように、正規代理店ではないところで修理・リメイクしたブランド品をCtoCサービスなどを通じて販売することは、商標法上問題があるのでしょうか。

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商品の加工についての裁判例

この点につき、同じブランド品について判断した裁判例としては東京地裁17年12月20日判決があります。この裁判例では、カルティエの正規品の時計等に第三者が無断でダイヤモンドを埋め込んで販売したことにつき、商標権を侵害するかが問題となりました。そして、結論としては商標侵害を認め、この第三者に対し販売の停止等、破棄及び損害賠償の支払いが命じられました。
裁判例は、商標権侵害につき、以下のように判断しています。

「被告製品のうち,腕時計は,原告商標権1ないし3の指定商品と同一であり,身飾品は原告商標権3及び4の指定商品と同一である。また,被告製品は,原告製品を加工したものであり,原告商標又はこれに類似する商標が付されている。よって,被告製品の譲渡,引渡し又は譲渡若しくは引渡しのための展示は,原告商標権1ないし4を侵害する(商標法25条,2条3項2号)。
 なお,被告製品は,原告製品を加工したものであるが,以下のとおり,原告製品の品質にも影響を及ぼす改変を施したものであり,原告商標の出所表示機能及び品質保証機能を害するものといわざるを得ない。
 ア 原告製品は,原告独自の品質管理に関する基準に基づき,製造されている(弁論の全趣旨)。
 イ 上記(1)イの部品には,いずれもダイヤモンドが付されているが,このダイヤモンドは,原告製品よりも小さいものである(甲16の1ないし25及び甲37)。
 ウ 上記イのダイヤモンドには,一見して傷が見られることから,品質が良くないものである(甲37)。
 よって,被告製品の譲渡等の行為は,原告製品を加工したことをもって違法性を欠くことにはならない。
 また,被告製品の広告には,「アフターダイヤ」などの表示があるが(甲10の1ないし21),真正な原告製品として,ダイヤモンドを付したものが販売されており,被告製品がこれと混同を生じるおそれのある形態であること(甲11)に照らせば,上記表示があるとしても,原告商標の出所表示機能及び品質保証機能を害することに変わりはない。」

この判決によると、裁判所は商標権の侵害の前提として商標の出所表示機能及び品質保証機能(*)を害することが必要であると捉えていることがわかります。そして、本件において、品質の良くないダイヤモンドが埋め込まれているということをもって品質に影響を及ぼす改変があるとし、これら機能が害されたと判断しています。

* 商標には、基本的な機能としての①自他商品等識別機能商標(自身の商品や役務と他者のこれらとを区別させる機能)があるほか、②出所表示機能(一定の商標が付された商品や役務が一定のものにより提供されたものであることを示す機能)、③品質保証機能(一定の商標が付された商品や役務についてはすべて同一の品質を有しているということを示す機能)④広告宣伝機能(消費者の購買意欲をかきたてる機能)があります。

裁判例を受けて

裁判例によれば、修理・リメイクしたブランド品の販売については、その修理・リメイクが商標の、出所表示機能を害したり(真正商品との混同を生じる)及び品質保証機能を害する(真正商品よりも品質が劣っているか)場合には、商標権侵害となる可能性が高いものといえます。

おわりに

このように、修理・リメイクしたブランド品の販売は、商標権侵害となる可能性がありますので、そのような商品が流通するCtoCサービスを展開する事業者としても、サービスが権利侵害を助長しないよう、十分に注意する必要があります。

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