コラム

ウェブサービスと法律

ポイントプログラムの法律関係と税務

はじめに
近年、顧客の囲い込みなどを目的として、ポイントプログラムが発展してきています。中でも、SNS等で、アンケートに答えると一定のポイントがもらえ、ポイントが貯まるとその企業の商品と交換できるというようなものが増えています。
このようなポイントプログラムについては、提供される特典(商品)も高額なものであることは少なく、トラブルになりにくいため、あまり厳密に考えることも少ないかと思われますが、法律上又は税務上は、どのようなものと理解すべきでしょうか。

前払式支払手段への該当性
ポイントについては、資金決済法で「前払式支払手段」について一定の規制がされているため、まずはこの「前払式支払手段」(資金決済法第3条)にあたるか検討する必要があります。
もっとも、「前払式支払手段」は、「対価を得て発行される」(同条1項1号)ものとされています。「対価」は、財産的価値があるもの全てと考えられますが、原則的には金銭です。
先ほどの例では、ユーザーは、アンケートに答えるだけで、お金を払ってポイントを得るわけではありませんので、この「対価を得て発行される」ものにあたらないと考えられます。
よって、このようなポイントは、資金決済法の規制対象である「前払式支払手段」にあたらないと考えられます。

仮想通貨への該当性
次に、同じく資金決済法で規制される「仮想通貨」にあたらないか検討する必要があります。
もっとも、「仮想通貨」とは、「不特定の者に対して使用」することができるものとされています(資金決済法第2条5項1号)。先ほどの例では、ユーザーは、貯まったポイントは発行企業に対してのみ使用できますので、「不特定の者に対して使用」することができません。
よって、このようなポイントは、資金決済法の規制対象である「仮想通貨」にあたらないと考えられます。

ポイントプログラムの法的性質
以上からは、先ほどのようなポイントプログラムは、資金決済法で規制されるものではなく、専ら当事者間の合意(契約)に基づくものと考えられます。この合意(契約)の中身が問題となりますが、概ね、一定のポイントが貯まった人に対して「商品を提供する」ことがその中心となっていますので、法律構成としては、「贈与契約」と理解するのが適切と考えられます。
また、通常、ポイントプログラムでは、ユーザーがポイントを行使してはじめて、いつ、何を提供するかが確定しますので、ユーザーによるポイント行使の意思表示を停止条件とする、停止条件付贈与契約と考えることができます。

ポイントプログラムの税務
このように、ポイントプログラムを停止条件付きの贈与契約と理解すると、ユーザーは、停止条件成就のとき、即ちポイント行使の意思表示をしたときにはじめて経済的利益を得られることになります。
よって、課税されるべき所得の認識のタイミングは、ポイントの行使をしたときということになります。
また、先ほどの例のようなポイントであれば、ユーザーの雑所得に該当することが多いものと思われます。
以上のようなポイントプログラムの税務については、「企業が提供するポイントプログラムの加入者(個人)に係る所得税の課税関係について」との研究で詳しく説明されています。
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/78/04/index.htm

おわりに
ポイントプログラムについては、提供される特典(商品)も高額なものであることは少なく、トラブルになりにくいため、あまり厳密に考えることも少ないかと思われますが、法律的・税務的には以上のように整理されるものが多いと思われます。
よって、上記を踏まえて、適切なルールのもとでプログラムを発展させていって頂ければと思います。

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