はじめに
2020年3月10日、株式会社ペイミーが次のリリースをしました。
「給料前払い」についての一部報道内容に関する当社の見解について
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000041.000028212.html)
本コラムでは、なぜペイミーがこのようなリリースをしたかについて解説していきます。
金融庁への照会
このリリースは、令和2年28日付の「金融庁における法令解釈に係る照会」に対する同年3月5日付の金融庁からの回答書を踏まえてのものです。
照会書及び回答書は、金融庁HP内の下記URLから閲覧することができます。
https://www.fsa.go.jp/common/noact/kaitou_2/kashikin/index.html
照会した内容は、「業として、個人(労働者)が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うことは、貸金業にあたるか」とのものでした。
給与ファクタリングのスキーム
照会されたスキームは、いわゆる「給与ファクタリング」と呼ばれるものです。
先ほどの照会内容をもとに説明すると、「個人(労働者)が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し」までは、単なるファクタリング(債権譲渡)ですが、「当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行う」という部分に特殊性があります。これは、賃金の特殊性として、労働基準法24条1項において「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とされているからです。
このため、業者は、賃金債権を買い取っても、自ら雇用主へ取り立てすることができず、結局、給与の支払いを受けた労働者から取り立てすることになり、上記のような特殊なスキームとなるのです。
金融庁の回答
この照会に対する金融庁の回答は次のとおりです。
「照会に係るスキームにおいては、賃金債権の譲受人から労働者への資金の交付だけでなく、賃金債権の譲受人による労働者からの資金の回収を含めた資金移転のシステムが構築されているということができ、当該スキームは、経済的に貸付け(金銭の交付と返還の約束が行われているもの。)と同様の機能を有しているものと考えられることから、(中略)照会に係るスキームを業として行うものは、(中略)「貸金業」に該当する。」
つまり、債権譲渡の形式をとってはいても、機能としては貸し付けなので、これを業として行えば貸金業となるとのものです。
これは、以前から「貸金業」にあたるのではないかと懸念されていたスキームについて、明確にクロとの答えが出たもので、今後の実務の参考となります。
ペイミーのリリース内容
これを受けて、ペイミーのリリースでは、次のように述べて、Paymeは給与ファクタリングではないと説明しています。
「当社サービスPaymeは、当社から従業員に対し給料の立替払いを行うものの、賃金債権の買取りを行ったり、従業員からの資金の回収を行ったりするものではなく、また、企業がその利用が認識している点で、給料ファクタリングとは大きく異なるものであると理解しています。」
つまり、Paymeは、同じ給与前払いサービスであっても、給与ファクタリングとは全く異なるもの(単に雇用主に代わって支払うサービス)であるため、今回の照会・回答の対象ではないと説明したのです。
ペイミーとしては、同じ給与前払いサービスであっても、その仕組みは給与ファクタリングとは全く異なるので、今回の金融庁の回答によって違法(貸金業違反)とされるものとは違うことをアピールする趣旨であったと考えられます。
おわりに
近年、給与前払サービスは非常に増えています。その仕組みは、サービス毎に様々ですが、このうち給与ファクタリングの仕組みを用いていたものについては、今回、明確に否定的な見解が示されました。
他方で、ペイミーが主張するように、給与前払サービスのすべてが「貸金業」にあたるわけではなく、個別に検討する必要があります。
よって、類似サービスを予定している業者は、その法的構成について、十分注意して検討しなければなりません。
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