コラム

ITと知的財産権

ぬいぐるみやフィギュアに著作権は認められるか

はじめに

漫画やアニメが原作のキャラクターのフィギュアについて、権利者に無断で模倣品を作成・販売すると著作権侵害となることは明らかです。例えば、2020年には、人気漫画である「鬼滅の刃」のフィギュアの模倣品が流通しているとして、販売元から知的財産権侵害品として注意喚起のプレスリリースがされました。
2019年7月登場 PVC塗装済み完成品 『鬼滅の刃 フィギュア-絆ノ装-壱ノ型』模倣品について
これに対して、原作のないオリジナルのぬいぐるみやフィギュアについては、その模倣品の作成・販売が著作権侵害となるか否かについては、簡単には答えが出ません。それは、これらは著作権法上、応用美術と考えられているからです。

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応用美術とは

応用美術とは、純粋美術(専ら鑑賞目的で制作されるもの)に対する考え方で、実用品に美的装飾をした(美術の感覚・技法を応用した)ものという意味です。

このような応用美術については、美術工芸品(著作権法2条2項)を除いて、意匠法で保護されるべきと考えられ、原則として著作権法の保護の対象外と考えられてきました。

そして、ぬいぐるみやフィギュアは、「玩具」という目的で量産される実用品です。
このため、これらのデザインは「応用美術」にあたり、原則として著作物と認められない(著作権法の保護の対象外となる)のです。

*他の応用美術と著作権法との関係については、「応用美術に著作権はあるか(意匠権と著作権との関係)」でも説明しています。

原作があるフィギュアとの違い

ここで、なぜ原作モノのフィギュアが著作権法で保護されるか疑念がわきますが、それは「原作」である漫画やアニメの絵が著作物(美術の著作物)だからです。
このため、無断で「原作」のあるキャラクターのフィギュアを作成・販売すれば、「原作」(とその二次的著作物であるフィギュア)の著作権を侵害してしまいます。

純粋美術と同等の美的創作性

先ほど述べたとおり、ぬいぐるみやフィギュアのデザインは応用美術にあたりますが、裁判例では、応用美術であっても、純粋美術と同等の美的創作性があれば著作物として認められています。
例えば、菓子のおまけである妖怪のフィギュアについて、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価された裁判例があります(チョコエッグ事件控訴審判決:大阪高判平成17年7月28日)。
これに対し、以下のように電動の動物型玩具について純粋美術とは同視できないとした裁判例もあります。
「『ファービー』に見られる形態には、電子玩具としての実用性及び機能性保持のための要請が濃く表れているのであって、これは美感をそぐものであり、『ファービー』の形態は、全体として美術鑑賞の対象となるだけの審美性が備わっているとは認められず、純粋美術と同視できるものでない」(ファービー事件控訴審判決:仙台高判平成14年7月9日)

これら以外の裁判例を踏まえても、まだ具体的な判断基準はみえてきません。
ただ、上記判決中で示唆されているように、そのデザインが類型的な(良くある)表現か、実用性・機能性保持のための要請を超えた表現があるかといった点などは、要素として重要といえます。

おわりに

このように、オリジナルのぬいぐるみやフィギュアについても、純粋美術と同等の美的創作性が認められれば著作権法上の保護の対象となります。
判断基準は明確ではなく、ケースバイケースの判断となりますが、類型的(良くある)表現か、実用性・機能性保持のための要請を超えた表現があるかは重要な点といえます。
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