資金決済法に基づく情報提供の義務
自社の発行するサービス内通貨が「前払式支払手段」にあたる場合、資金決済法上、一定の情報を提供する義務が生じます。各Webサービスにおいて「資金決済法に基づく表示」として設けられているページはこの義務に基づくものです。
資金決済法上表示すべき内容
法令上記載が義務付けられているのは、以下の各項目になります(資金決済法13条1項各号、及び前払式支払手段に関する内閣府令(以下、「内閣府令」といいます。)22条2項各号)。
① 氏名、商号又は名称
→発行主体を記載します。個人であれば氏名、法人であれば会社名を記載します。
② 前払式支払手段の支払可能金額等
→前払式支払手段の一回あたりや月あたりの購入の限度額や、一回当たりの前払式支払手段の使用の限度額等を記載します。支払可能額等がなければ、これがない旨を記載します。未成年の利用者が多いWebサービス(*1)などでは、年齢ごとの購入上限を記載することもあります。
③ 物品の購入若しくは借受けを行い、若しくは役務の提供を受ける場合にこれらの代価の弁済のために使用し、又は物品の給付若しくは役務の提供を請求することができる期間又は期限が設けられているときは、当該期間又は期限
→期間や期限が設けられているときにこの記載をすることになります。前払式支払手段の購入や使用の時点から1年など、事業者側の管理の必要性から一定の期間が定められることも多くあります。また、必ずしも必要はないのですが、サービス利用に関する契約の解除など、サービス自体が使えなくなった場合についてもあえて触れているサービスもあります。
④ 前払式支払手段の発行及び利用に関する利用者からの苦情又は相談に応ずる営業所又は事務所の所在地及び連絡先
→営業所又は事務所の所在地に加えて、連絡先を記載することが必要になります。連絡先としては、苦情又は相談窓口のメールアドレスや電話番号を記載したり、問い合わせ用のフォームへのリンクを貼ることが一般的です。
⑤ 前払式支払手段を使用することができる施設又は場所の範囲
→前払式支払手段を利用できるサービス名等を記載します。
⑥ 前払式支払手段の利用上の必要な注意
→返金等ができない旨記載されることが多くあります。これは、資金決済法上、原則として前払式支払手段の払い戻しが禁止されているためです。その他、当該サービス独自の注意点を記載することになります。注意事項が多くあれば、これをまとめた別ページにリンクを貼るなどすることになります。
⑦ 電磁的方法により金額(金額を度その他の単位により換算して表示していると認められる場合の当該単位数を含む。)又は物品若しくは役務の数量を記録している前払式支払手段にあっては、その未使用残高(法第三条第一項第一号の前払式支払手段にあっては代価の弁済に充てることができる金額をいい、同項第二号の前払式支払手段にあっては給付又は提供を請求することができる物品又は役務の数量をいう。)又は当該未使用残高を知ることができる方法
→ユーザが保有する前払式支払手段の残高等の確認方法を記載します。どのページにアクセスすれば確認できるか等を記載することになります。
⑧ 前払式支払手段の利用に係る約款若しくは説明書又はこれらに類する書面が存する場合には、当該約款等の存する旨
→一般的には利用規約のリンクを貼ることになります。
*1 ゲーム系のアプリなどがこれにあたります。このようなサービスでは、未成年による多額の前払式支払手段購入を防止するため、このような定めがされることがあります。
情報提供の方法等
前記各情報については、冒頭で触れたように自社サイト上で専用のページを作って公表することが一般的です。なお、前記④から⑧までの各項目については、認定資金決済事業者協会(*2)がそのサイト上で周知する方法によっても代えることができます。しかし、これは専ら商品券やプリペイドカードなどの前払式支払手段について用いられる方法であるので、基本的には自社ページ上に公表する方法をとることになるものと思われます。
また、記載の仕方についても規定があり、情報提供にあたっては、各記載を当該サービスのユーザにとってわかりやすいものとする必要があります(内閣府令22条1項本文)。
*2 平成29年10月30日現在においては「日本資金決済業協会」のみがこれにあたります。
おわりに
前払式支払手段については前記情報提供義務のほか、各種の義務が規定されています。サービス内通貨等の発行をするにあたっては、これを前払式支払手段の規制をうけるものとして設計するか等も含め、よく検討することが重要です。
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