コラム

IT関連の裁判例

データベースからのデータ抽出と不法行為

裁判年月日など

令和元年12月19日付け判決

事案の概要

本件は、X社が、同社がヤフー株式会社に有償で提供したデータベースを、Y1が無断で複製し、Y1が代表取締役を務めるY社の営業活動に利用したと主張して、Y1に対し民法709条に基づき、Y会社に対し会社法350条に基づき、損害賠償金723万2162円及びこれに対する不法行為後の日である平成29年9月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案です。

*民法709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

*第350条
株式会社は、代表取締役その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

Xは、都道府県等の行政機関による公開情報の収集、確認及び各医療機関に対する直接の取材行為等を通じて、各医療機関の正式名称及び略式名称、経営主体、住所、電話番号等の連絡先、診療時間、休診日、診療科目、病床数、アクセスに便利な交通機関名および最寄駅等(以下「医療機関基本情報」といいます。)を独自に収集し、データベース(以下「本件DB」といいます。)を作成しています。

ヤフーは、平成13年12月から平成30年3月まで、健康と医療関連の総合情報サービスである「aサイト」を無料で公開し、aサイトは、Xのほか、株式会社NTTデータ及び株式会社じほうから情報の提供を受けていました。
ヤフーは、同社が提供するサービスの利用規約において、「サービスを,提供の趣旨に照らして本来のサービス提供の目的とは異なる目的で利用する行為」を禁止しています。

Y会社は、「○○」というウェブページにおいて、aサイトに掲載されている全国病院データを、顧客に代わって有償で収集する業務(本件Y業務)を行っていました。

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本件の争点

本件Y業務について不法行為が成立するか。

争点に対する裁判所の判断

「Xが本件DBの作成及び維持(更新等)のために費用及び労力をかけており,本件DBに独立の経済的価値が存在すること及び本件DBが著作物として保護されるものではないことは,当事者間に争いがないところ,DBが著作物として保護されない場合には,当該DBに独立の経済的価値があるとしても,その情報を収集して他のDBに組み込む行為は,情報及びDBの内容及び性質,行為の態様及び目的,権利侵害の程度等に照らして,著しく不公正な方法で他人の権利を侵害したと評価できる場合に限り,不法行為を構成すると解すべきである。」

「本件Y業務の内容は,上記のとおり,特定の時点においてaサイトに無料で掲載されている情報の中から,顧客が指定する条件に従って情報を収集して顧客に提供するというものであり,顧客自身でも行おうと思えば行えるものである。情報の提供も1回限りであって,更新は予定されておらず,料金は,高いもので1件当たり5万円程度であり,証拠上認められる売上げは,合計27万1080円に止まる。そして,本件Y業務によって,Xが本件DBの販売機会を失ったと認めるに足りる証拠はない。」

「本件Y業務によって,Y会社が自認する金額を超える売上げが発生したことを窺わせる証拠は見当たらず,本件で取り調べた全証拠によっても,本件Y業務が原告の売上げに何らかの悪影響を与えたといえるかは全く不明であって,この点に関するXの主張は採用できない。」

コメント

一般的に、DBは著作物にあたりません。このため、経済的価値のあるDBであっても、これを複製・譲渡する行為は著作権侵害とはなりません。とはいえ、このような行為に対して何らかの責任を問えないのかとの問題意識が、本件提訴からうかがえます。

この点について、判決は「情報及びDBの内容及び性質,行為の態様及び目的,権利侵害の程度等に照らして,著しく不公正な方法で他人の権利を侵害したと評価できる場合に限り,不法行為を構成する」との判断基準を示しましたが、「著しく不公正」のハードルは高く、犯罪的な態様でなければ不法行為にならないとの趣旨と考えられます。

今般、サイトをクロールして情報を集め、自サイト(サービス)で利用するサイト(サービス)が増えており、参考になる裁判例です。

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