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【令和6年10月1日施行】登記上の代表取締役等住所の非表示措置について

代表取締役等住所非表示措置とは

現行法では、会社の代表取締役はその氏名と住所を登記する必要があり(会社法第911条第3項第14号)、その住所に変更があった場合には2週間以内に変更の登記をしなければなりません(同法第915条第1項)。

令和6年10月1日施行の代表取締役等住所非表示措置は、一定の要件の下、株式会社の代表取締役等の住所の一部を登記事項証明書や登記事項要約書、登記情報提供サービス(以下総称して「登記事項証明書等」といいます。)に表示しないこととする措置です。

この代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合、登記事項証明書等において、代表取締役等の住所は最小行政区画(市区町村まで。東京都においては、特別区まで、指定都市においては区まで。)までしか記載されないこととなります。

登記事項での表示のイメージを弊所住所を例にすると以下のようになります。

東京都渋谷区道玄坂一丁目12番1号 → 東京都渋谷区

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代表取締役等住所非表示措置の要件

1.登記事項と同時に申し出ること

当該措置を講ずることを希望する場合、登記官に対してその旨を申し出る必要があります。さらに、この申出は、設立の登記や代表取締役等の就任の登記、代表取締役等の住所移転による変更の登記など、代表取締役等の住所が登記されることとなる登記の申請と同時にする場合に限り行うことができます。

※今回の改正による代表取締役等住所非表示措置では、一定の登記申請と同時に行われる場合にのみ認められるため、既に登記がされている代表取締役等の住所について非表示の申出のみ行うということはできません(パブリックコメント「「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見募集の結果について」法務省民事局商事課、25)。
また、同様に、既に退任をした代表取締役等の住所についての非表示の申出や閉鎖事項証明書や閉鎖登記簿謄本に記載された住所を含め、過去の住所については対象外となります(同36)。

 

2.所定の書面を添付すること

当該措置の申出にあたり、会社の区分に応じた書面の添付が必要となります。

・上場会社である株式会社の場合:
 株式会社の株式が上場されていることを認めるに足りる書面
※既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合は不要

・上場会社以外の株式会社の場合:
 次の(1)から(3)までの書面
※既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合は(2)のみ
(1) 株式会社が受取人として記載された書面がその本店所在地に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書面等
(2) 代表取締役等の氏名及び住所が記載されている市町村長等による証明書(例:住民票の写し等)
(3) 株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面(株式会社が一定期間内に実質的支配者リストの保管の申出をしている場合は提出不要)

代表取締役等住所非表示措置の終了

当該措置が講じられた株式会社から、当該措置を希望しない旨の申出があった場合や、当該株式会社が本店所在場所に実在しないことが認められた場合等は、登記官の職権により当該措置を終了させることになります。

※当該措置が講じられた場合であっても、会社法に規定する登記義務が免除されるわけではないため、代表取締役等の住所に変更が生じた場合には、その旨の変更の登記をする必要があります。

代表取締役等住所非表示措置による影響

当該措置は、プライバシー保護の観点から一定の重要性を持つ一方で、当該措置が講じられた場合に、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、法人の本人確認資料として不十分な内容となり、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたり、法務手続きが煩雑になったりするなど、一定の支障が生じることが想定されています。

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参考資料:

法務省「代表取締役等住所非表示措置について

商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号)

パブリックコメント「「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見募集の結果について」法務省民事局商事課

パブリックコメント「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見(案件番号 300080305)令和6年1月25日東京司法書士会

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