裁判年月日など
東京地裁 平成31年2月21日付け判決
事案の概要
Xは,自らが製作したXホームページをWEB上で公開しましたが、グーグル検索サービスにおいてXで検索して表示される検索結果のほとんどがXホームページと同じ内容であるY1のホームページにリンクしました。
他方で、Y会社は,アフィリエイト・サービス・プロバイダであり、Y1はY会社のメディア会員でした。
Xは,Y会社に対し,Y1がY会社のシステムを利用してXに無断でXホームページをコピーしてホームページを作成している等として,本件運営者の氏名の開示等を求めましたが、Y会社は,これに応じませんでした。
本件の争点(Y会社が本件運営者の違法行為を幇助したか)
・Xの主張
Y1は,Y会社が運営するアフィリエイトシステムのメディア会員であり,Y会社には,本件運営者がアフィリエイトシステムを利用する際に本件運営者のWEBサイトの内容を監視する義務があったにもかかわらず,これを怠った。また,Y会社は,Xが本件運営者の氏名の開示を求めても,これに応じなかったから,Y会社は,本件運営者による違法行為を幇助した。
・Y会社の主張
Y会社は,メディア会員に対する監視を怠っていない。Y会社には本件運営者の氏名の開示に応じる義務はなく,Y会社がこれに応じなかったからといって,本件運営者による違法行為を幇助したことにはならない。
争点に対する裁判所の判断
「Y会社は,Xから本件運営者の氏名の開示を求められるまで,本件運営者に対し,本件HP及び本件ツイッターの削除を求めていない(略)から,Y会社が本件運営者の運営するWEBサイトについて監視業務を尽くしていなかったといえなくはない。
しかし、Y会社は,Xから本件運営者の氏名の開示を求められるや,直ちに本件運営者に対し本件ホームページ及び本件ツイッターの削除を求めているから,Y会社が監視業務を尽くしていなかったといえなくはないことをもってY会社が本件運営者による違法行為を幇助したとはいえない。」
「Y会社には,Xに対し,本件運営者の氏名の開示に応じる義務はないから,Y会社がこれに応じなかったからといって,本件運営者による違法行為を幇助したことにはならない。」
コメント
本件は、アフィリエイト目的での他ホームページの模倣が問題となった裁判例です。模倣サイトの運営者だけでなく、アフィリエイトサービスプロバイダ(ASP)までが訴えられた点に特徴があります。
裁判所は判断基準を示していませんが、ASPには模倣(権利侵害)サイトを監視すべき義務がありこれを放置すべきではないものの、氏名開示請求があった時点で削除要求をしていれば違法行為の幇助にはあたらないと判断しています。
これは、逆には、ASPが氏名開示請求後も模倣サイトを放置していれば、違法行為の幇助となりえるとの判断とも解釈できますので、十分に注意する必要があるといえます。
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