商品画像の使用
ECサイトで商品を販売する際、通常は商品画像を使用することになります。そして、商品画像は消費者にとっては商品を知るための数少ない手掛かりになるため、どのような画像を使用するかは売り手にとって非常に重要な問題です。では、自分のサイトで他社製品を販売するとき、他社が公式に提供している画像を使用することは許されるでしょうか。
商品画像の著作権
著作権とは「著作物」について生じる権利です。そして、著作権法2条1項1号によれば、著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます。つまり、商品画像が著作物にあたらなければ、画像を無断使用しても著作権侵害には当たりません。
ここで、商品画像は通常商品を撮影したものですから、はたして「思想又は感情を創造的に表現した」「美術」品といえるのかについては少々疑問が生じるところです。
この点については参考となる裁判例があります。
東京地裁平成27年1月29日判決
本訴訟では、北欧の家具等を販売する会社の商品の買物代行を行っていた事業者が、自身のサイト上で上記会社の公式の画像を無断で使用していたところ、これが著作権侵害となるのか、そもそも商品画像が著作権侵害にあたるのかが問題となりました。そして結論として商品画像を著作物と認めた上で、買物代行業者の行為は複製権等(*1)を侵害するものであるとして、使用の差止め、画像データの破棄、及び使用料相当額として一画像あたり1000円の損害金の支払いを命じました。
具体的な判示は以下の通りです。
(商品画像の著作物性について)
「原告各写真は,原告製品の広告写真であり,いずれも,被写体の影がなく,背景が白であるなどの特徴がある。また,被写体の配置や構図,カメラアングルは,製品に応じて異なるが,原告写真A1,A2等については,同種製品を色が虹を想起せしめるグラデーションとなるように整然と並べるなどの工夫が凝らされているし,原告写真A9,A10,H1ないしH7,Cu1,B1,B2,PB1については,マット等をほぼ真上から撮影したもので,生地の質感が看取できるよう撮影方法に工夫が凝らされている。これらの工夫により,原告各写真は,原色を多用した色彩豊かな製品を白い背景とのコントラストの中で鮮やかに浮かび上がらせる効果を生み,原告製品の広告写真としての統一感を出し,商品の特性を消費者に視覚的に伝えるものとなっている。これについては,被告自身も,「当店が撮影した画像を使用するよりは,IKEA様が撮影した画像を掲載し説明したほうが,商品の状態等がしっかりと伝わると考えております。ネットでの通信販売という性質上,お客様は画像で全てを判断いたします。当店が撮影した画像ではIKEA様ほど鮮明に綺麗に商品を撮影することができません。」(甲34,被告本人)と述べているところである。
そうであるから,原告各写真については創作性を認めることができ,いずれも著作物であると認められる。」
(著作権侵害について)
「そして,被告各写真は原告各写真と同一であり,被告各文章等は原告各文章等と同一ないし類似するのであるから,本件写真等を被告サイトに掲載することは原告の複製権,翻案権及び公衆送信権を侵害することになり,著作権法112条1項,2項に従い,原告は,被告に対し,本件写真等の使用を差し止め,これに係るデータの廃棄を請求することができる。なお,その対象は,被告サイト事業が販売中の原告製品を転売するものであること及びウェブサイト上のデータの変更が容易であることに鑑みると,現在も販売が継続している原告製品に係る被告各写真及び被告各文章等の全てであると解するのが相当である。」
「ア 被告は,原告の複製権又は翻案権及び公衆送信権を侵害したところ,これについて,少なくとも過失があると認められるから,原告は,被告に対し,これによる損害の賠償を請求することができる。そして,原告は,著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額の損害を被ったものと認められる。
イ 原告各写真の著作物使用料相当額については,原告各写真は被告サイト事業において極めて重要なものであるとは考えられるものの,広告写真としての原告各写真の創作性の程度が比較的低いことや原告の請求額に加え,ウェブサイトにおけるデータ変更の容易性等に鑑みれば,掲載期間に関わらず,一著作物当たり1000円と認めるのが相当である。」
*1 著作権は複数の権利が集まったもので、そのひとつひとつを構成する権利を支分権と呼びます。本判決では、買物代行事業者が商品画像のほか、家具会社が商品に付していた文章と同一ないし類似する文章もサイト上で使用していたため、複製権(著作権法21条)、翻案権(同法27条)、ないし公衆送信権(同法23条1項)の3つの支分権を侵害したものと判断されました。
創作性の判断基準
判決は商品画像について、背景が白で統一されていること、画像上、商品がグラデーションになるように配置されていることなど、工夫が凝らされているものであって、創作性が認められるものであると評価し、著作物であるとしています。この判決に従えば、本件で問題となった商品画像とは異なり、ただ漫然と商品を撮影したに過ぎない商品画像には創作性が認められず、著作物とは言えないことになりそうです。
おわりに
このように、商品画像が著作物にあたるには、一定の工夫により「創作性」が認められる必要があります。「一定の工夫」の有無を判断するには、専門的知識を要する場合がありますので、迷った際には、専門家へ相談することをおすすめします。
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