ウェブサービスの名称等について、商標登録すべきか否か悩むことも少なくありません。本稿では、商標権について概観したあとで、どのような場合に商標登録すべきかについてご説明したいと思います。
まず、商標権は、著作権とは異なり、商標登録されて初めて発生する権利です。商標登録されるには、特許庁へ商標出願し、登録査定を受けたうえで(商標出願から登録査定までは、おおよそ半年程度かかります)、登録料を納付する必要があります。
商標権の存続期間は、商標登録の日から10年間です。期間満了後も、更に、更新登録料を払って存続期間を延長することができます。
もっとも、商標出願すれば、必ず商標登録できるわけではありません。例えば、商品やサービスの普通名称(例えば「パソコン」など)は、商標登録の要件を充たしません(商標法第3条1号)。この他、既に登録された商標と同一/類似の商標を同じ区分で取得することなどもできません。商標登録が可能か否か判断には専門的知識が必要ですので、必要であれば、弁理士等へ調査を依頼することをお勧めします。
それでは、商標を登録することには、どのような効果があるのでしょうか?
商標登録には、大きく分けて、積極的な効果と消極的な効果があります。
まず、積極的な効果とは、商標登録により、指定された分野においては、貴社がその商標を独占的に使用することができるということです。例えば、「MACBOOK」といった商標は、それ自体がブランド化し、広告宣伝機能を果たしていますから、競業他社にそのブランド力にただ乗りされないように、商標登録をしておく必要があるのです。
次に、消極的な効果とは、商標登録により、指定された分野において、貴社がその商標を使用し続けられるということです。例えば、貴社が従前、「iCLOUD」というクラウドサービスを展開していたとしても、他社がこの分野で「iCLOUD」を商標登録してしまえば、貴社はその名称を使うことができなくなってしまいます。ある程度まで成長したサービスの名称を変更することはリスクが大きいため、出来る限り避ける必要があります。
それでは、どのような場合に、ウェブサービスの名称を商標登録した方が良いのでしょうか?
様々な考え方がありますが、新たに始めるサービス名について
①今後、中長期的に発展させていきたいサービスか
②そのサービス名にブランド力があるか、又はそのように発展していく可能性が高いか
③他社が競合するサービスを始める可能性があるか
④他社が競合サービスに類似の名称をつける可能性があるか、またそれを商標登録する可能性はどの程度あるか
⑤万が一のときに、サービス名を変更することでどの程度のコストやダメージがあるか
などを総合的に考慮し、商標登録にかかるコストと比較して、商標登録すべきか否か、検討することが望ましいといえます。
サービスなどの名称は、集客においてとても重要な要素です。ぜひ、慎重にご検討頂きたいと思います。
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