コラム

インターネットと個人情報

退会ユーザーから個人情報の削除要請を受けた場合の対応

*本コラムは令和4年4月1日施行の改正個人情報保護法を前提にしています(2022年5月19日追記)。

マイナンバーの導入や、個人情報保護法改正法の施行により、近時、消費者において、個人情報保護について権利意識が強くなってきています。このため、今後、顧客から、サービスの退会にあたり「会社に保存されている自分の個人情報を全部削除して欲しい」といった要求を受けることもあると思われます。
それでは、個人情報保護法上、サービス提供者は、退会したユーザーの個人情報を削除しなければならないのでしょうか?

個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(以下、「ガイドライン」といいます。)3-8-5に沿ってみていきます。

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個人情報保護法(以下、「法」といいます。)第35条第1項は、ユーザー(本人)が個人情報の消去を要求できる場合について、次のとおり規定しています。

個人情報取扱事業者は、以下のいずれかに該当する場合には、保有個人データの利用停止若しくは消去(又は第三者提供の停止)を行わなければなりません。

(1) 法違反の場合の利用停止等

法第35条 本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データが第18条若しくは第19条の規定に違反して取り扱われているとき、又は第20条の規定に違反して取得されたものであるときは、当該保有個人データの利用の停止又は消去(以下この条において「利用停止等」という。)を請求することができる。

即ち、個人情報について、個人情報保護法の定めに反して

① 取り扱われている場合
② 取得された場合

には、利用停止又は消去(削除)を求めることができます。

そして、上記請求を受けた場合、事業者は、原則として、遅滞なく、当該データの利用停止等を行わなければなりません(法第35条第2号)。
*当該データの利用停止等に多額の費用を要する場合やその他の利用停止等を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りではありません(法第35条第2号ただし書)。

(2) 法第35条第5項の要件を満たす場合の利用停止

法第35条第5項 本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データを当該個人情報取扱事業者が利用する必要がなくなった場合、当該本人が識別される保有個人データに係る第26条第1項本文に規定する事態が生じた場合その他当該本人が識別される保有個人データの取扱いにより当該本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合には、当該保有個人データの利用停止等又は第三者への提供の停止を請求することができる。

即ち、以下の場合には、原則として、遅滞なく、利用停止等又は第三者提供の停止を行わなければなりません。

① 利用する必要がなくなった場合
② 本人が識別される保有個人データに係る法第26条第1項本文に規定する事態が生じた場合
③ 本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合

利用する必要がなくなったとして利用停止等が認められる事例として、ガイドラインには以下が挙げられています。

事例1)ダイレクトメールを送付するために個人情報取扱事業者が保有していた情報について、当該個人情報取扱事業者がダイレクトメールの送付を停止した後、本人が消去を請求した場合
事例2)電話勧誘のために個人情報取扱事業者が保有していた情報について、当該個人情報取扱事業者が電話勧誘を停止した後、本人が消去を請求した場合

本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがあるとして利用停止等が認められる事例としては以下が挙げられています。

事例2)電話勧誘を受けた本人が、電話勧誘の停止を求める意思を表示したにもかかわらず、個人情報取扱事業者が本人に対する電話勧誘を繰り返し行っていることから、本人が利用停止等を請求する場合
事例3)個人情報取扱事業者が、安全管理措置を十分に講じておらず、本人を識別する保有個人データが漏えい等するおそれがあることから、本人が利用停止等を請求する場合

また、本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがないとして利用停止等が認められない事例については以下が挙げられています。

事例1)電話の加入者が、電話料金の支払いを免れるため、電話会社に対して課金に必要な情報の利用停止等を請求する場合
事例3)過去に利用規約に違反したことを理由としてサービスの強制退会処分を受けた者が、再度当該サービスを利用するため、当該サービスを提供する個人情報取扱事業者に対して強制退会処分を受けたことを含むユーザー情報の利用停止等を請求する場合

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