SNS(インスタグラム、X、Facebookなど)の運用を外部委託することが増えています。
そのような際は、SNS運用の代行企業(受託者)側から契約書雛形を提示されることが多いと思います。
代行企業が提示する雛形は代行企業に有利に作成されていますので、依頼企業としては、それを批判的にチェックし、必要に応じて修正等を加える必要があります。
本コラムでは、依頼企業目線でのチェックポイントと、それを踏まえた雛形(参考案)を公開します。
(1)著作権(知的財産権)の扱い
代行企業が提示する雛形では、多くの場合、作成されたコンテンツ(写真、動画等)の知的財産権(主に著作権)は代行企業のもの(帰属する)とされています。
しかし、依頼企業としては、費用をかけて制作したコンテンツは、自由に利用・処分できるようにしたいはずです。
よって、契約書では、作成されたコンテンツの知的財産権(著作権を含む)は、依頼企業のもの(依頼企業に帰属する)と修正を求める必要があります。
(2)業務内容の詳細(特に月に〇回などの具体的数値)
代行企業が提示する雛形では、多くの場合、業務内容は抽象的にリストアップされています。
しかし、依頼企業にとっては、コンテンツの制作頻度や投稿頻度などは非常に重要ですので、書面上で明確にしておくことが望ましいです。
よって、契約書(又は仕様書等でも可能です)では、コンテンツの制作頻度や投稿頻度の具体的数値を明記するように修正を求める必要があります。
また、制作されたコンテンツが納得のいかないものであった場合に無償で修正を求められることも重要です。
(3)契約期間・中途解除の可否
SNS運用代行契約に限らず、業務委託契約では、業務がはじまってみるまで、受託企業の業務のクオリティが分からないことが通常です。
当初から長期契約を締結してしまうと、クオリティに納得できなくても、期間満了まで継続しなければならなくなってしまいます。
よって、契約書では、契約期間を短く設定するか、長期契約であれば中途解約の条項を追記するように修正を求める必要があります。
以上を前提に、以下のとおり契約書の雛形(参考例)を以下のとおりお示しします。
適宜、追記・変更等をしてご利用ください。
弊所では、SNS運用代行契約に関するご相談も多数お受けしています。
お悩みの企業の方はお気軽にご相談ください。
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SNS運用代行契約書
甲(依頼者の会社名)及び乙(受託者の会社名)は、甲が乙に委託するSNS運用代行(以下「本業務」といいます。)に関して、以下のとおり契約(「本契約」といいます。)を締結する。
第1条(本業務の内容)
1.本業務は、甲が利用するSNSアカウントについて、乙が善良なる管理者の注意をもって以下の業務を行うことによって、その運用支援をすることを内容とする。
(1) SNSアカウント(〇〇、〇〇等)の運用管理
(2) 投稿コンテンツの企画・作成・投稿代行
(3) コメント・メッセージへの対応(必要に応じて)
(4) KPIのモニタリング及び報告
(5) 運用レポートの作成(月1回)
(6) Googleアカウント(Google Analytics/Google Drive等)のアクセス権限の共有
(7) 投稿時間帯の指定に応じたスケジューリング投稿(原則〇曜日〇時等)
2.乙は、コンテンツやメッセージ(以下「コンテンツ」という。)については、投稿・送信の前に甲に確認をとり、その了承を得た上で行うものとする。
3.甲は乙に対し、コンテンツの修正を無償で求めることができ、乙は合理的な範囲でこれに応じるものとする。
4.前各項に定める他、具体的な業務内容・KPI等については別途定めるものとする。
第2条(本業務の再委託)
乙は、本業務を遂行するにあたり、甲の承諾を得て、その業務の全部または一部を個人情報の委託も含めて第三者に再委託できるものとする。この場合、乙は当該再委託先の行為について甲に対して連帯責任を負い、本契約に基づき乙が負担する義務と同等の義務を当該再委託先に負わせるものとする。
第3条(知的財産権)
1.本業務によって制作されたコンテンツ(画像、動画を含むがこれらに限られない。以下「コンテンツ」という。)の著作権、商標権その他一切の知的財産権は、発生と同時に甲に帰属する。かかる移転の対価は、本料金に含まれるものとする。ただし、乙が本契約締結前に独自に有していた著作物の著作権は、乙に留保されるものとする。
2.乙は甲に対し、前項但書の著作物について、コンテンツの利用に必要な限度で、一切の利用を許諾する。かかる利用許諾の対価は、本料金に含まれるものとする。
3.乙は甲に対し、コンテンツに関して著作者人格権を行使しない。納入物の作成者が、乙以外の法人または個人の場合は、乙は甲に対し、当該作成者が著作者人格権を行使させないことを保証する。
4.乙は、コンテンツが、第三者の著作権その他の権利を侵害しないことを保証する。
第 4条(契約期間)
1.本契約の有効期間は、〇〇年〇〇月〇〇日から〇〇年〇〇月〇〇日までとし、期間満了の1か月前までに甲乙いずれからも書面(電子メールを含む。以下同じ。)による異議がなされないときには、本契約は期間満了の翌日から起算して、同一内容にて同一期間延長されるものとし、それ以後も同様とする。
2.前項にかかわらず、甲は、1か月以上の予告期間をもって通知することにより又は1か月分の料金を払って即時に、本契約を中途解約することができるものとする。
第5条(料金)
1.本業務利用の対価(以下「本料金」といいます。)は、別途定める通りとする。
2.甲は、本料金を月末締で該当月の翌月末日(金融機関休業日の場合は翌営業日)に乙の指定する銀行口座に振込む方法で、乙に対して支払うものとする(振込手数料は甲負担)。
第6条(SNSアカウント)
1.SNS アカウントについて、本契約期間中、本業務遂行のために乙が共有・共用することができるものとし、甲は予めこれを了承するものとする。
2.甲は、本契約期間中、乙の事前の承諾なく、SNS アカウントを乙以外の第三者に貸与または共有・共用しないものとする。また、SNS アカウントの ID 等を第三者に開示・漏洩することのないよう善良なる管理者の注意をもって管理するものとする。
3.乙は、乗っ取りその他事由により SNS アカウントが乙(その再委託先も含みます。)及び甲以外の第三者に利用されていることが判明した場合、速やかにその事実を甲に報告するものとする。
4.乙は、本契約終了時、直ちにID 等を削除し、削除した旨を甲に通知する。
第7条(秘密保持)
1. 本約款に定める秘密情報とは、媒体及び手段を問わず、本契約に基づき相手方より提供を受けた技術上、営業上、またはその他業務上の一切の情報をいい、個人情報(個人情報保護法第2条第1項に定めるものをいいます。)も秘密情報に含まれるものとする。ただし、次の各号に該当する情報は、それが個人情報である場合を除き、秘密情報に含まないものとする。
- 相手方から提供を受けたとき、既に公知であった情報
- 相手方から提供を受けた後、受領者側の帰責事由なく公知となった情報
- 秘密保持義務を負うことなく、既に保有する情報
- 秘密保持義務を負うことなく正当な権限を有する第三者から正当に入手した情報
- 相手方から提供を受けた情報によらず、独自に開発した情報
2. 甲及び乙は、前項に定める秘密情報の一切を厳に秘密として保持し、事前の相手方の書面による承諾なく、目的外の利用をし、又は第三者に開示・漏洩してはならないものとする。但し、次の各号のいずれかに該当する場合は、秘密情報を開示することができるものとする。
- 法令または裁判所もしくは政府機関の強制力を伴う命令、要求もしくは要請に基づき、秘密情報を開示する場合
- 必要最低限の範囲内で、弁護士、公認会計士、その他専門家であって、本契約に定め
る秘密保持義務と同等の義務を負う者に対して開示する場合
3. 本契約が終了した場合、乙及びお客様は、相手方から提供を受けた秘密情報及びその複製物を相手方の指示に従い速やかに破棄もしくは返還し、また破棄・返還した旨を書面によって相手方に通知するものとする。
第8条(個人情報の保護)
甲と乙は、個人情報(「個人情報の保護に関する法律」に定める「個人情報」をいうものとする。)を、法令及びガイドラインその他自己が定めるプライバシーポリシーに則り、善良な管理者の注意をもって適切に管理するものとする。
第9条(解除)
1.甲及び乙は、相手方が次の各号のいずれかに該当する場合、何らの催告を要せず直ちに本契約の全部または一部を解除できるものとする。
- 仮差押、仮処分、強制執行、競売等の申立、仮登記担保契約に関する法律第2条に定める通知、手形交換所の取引停止処分、若しくは租税公課の滞納、その他滞納処分を受け、またはこれらの申立、処分、通知を受けるべき事由を生じた場合
- 支払停止の状態に陥り、または破産手続き開始、民事再生手続き開始、会社更生法手続き開始の申立を受け、若しくは自らこれらの申立をした場合
- 虚偽の事実を申告、または契約を継続しがたい重大な背信行為をした場合
- 前各号に定める場合のほか、乙が業務を行ううえで重大な支障がある場合または重大な支障の生じるおそれがある場合
- 第 23 条に基づき乙が停止措置をする場合、当該停止措置の日から(甲に連絡が 取れる場合は、乙が停止事由に該当する状態を解消する旨、甲に催告した日から) 5営業日以内に甲が当該状態を解消できなかった場合
2.第1項各号のいずれかに該当する場合、当該当事者は、本契約に基づく債務について期限の利益を喪失し、直ちに債務を履行するものとする。
3.解除当事者は、第1項に定める解除を行った場合であっても、相手方に対する損害賠償請求権を失わないものとする。
第10条(損害賠償)
1.甲が本約款の違反または本業務の利用に関連して乙に損害を与えた場合、お客様は乙に発生した損害(逸失利益及び弁護士費用を含みます。)を賠償する。
2.甲が、本業務の利用によって第三者に対して損害を与えた場合、または第三者からクレームが通知される等、甲と第三者との間で紛争に持ち込まれた場合、甲の責任と費用をもって処理解決するものとする。甲が本業務の利用に伴い第三者から損害を受けた場合も同様とする。
第11条(反社会的勢力の排除)
1.乙および甲は、次の事項を誓約するものとする。
- 自らまたは役員が暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、特殊知能暴力集団等(以下「反社会的勢力」という)ではないこと
- 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、本業務の遂行を受けるものではないこと
- 反社会的勢力が経営に関与していないこと
- 反社会的勢力に資金提供を行う等、その組織の維持、運営に関与していなこと
- 自らまたは第三者を利用して、暴力、脅迫、恐喝、威圧等の暴力的な要求行為、詐欺的な行為、業務を妨害する行為、名誉、信用等を毀損する行為、その他これらに準ずる行為を行わないこと
2.甲において前項の誓約に反する事実が判明した場合、乙は、何らの催告を要せず即時に本業務の遂行を終了することができるものとし、終了によってお客様に損害が生じたとしても乙は一切の責任を負わないものとする。
第12条(存続条項)
本契約終了後も、第3条、第7条ないし8条、第10条、本条及び第13条までの条項は有効に存続するものとする。
第13条(裁判管轄)
甲及び乙は、本契約に関し裁判上の紛争が生じたときは、訴額に応じて、甲の本店所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所を専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。
以上、本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、各当事者記名押印の上、各1通を保有する。
令和〇年〇月〇日
甲:(会社名)
住所:
代表者:
署名・押印:
乙:(会社名)
住所:
代表者:
署名・押印:
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