コラム

ウェブサービスと法律

継続契約で提供できる景品の上限額は?

はじめに
景品表示法では、取引に付随して提供できる景品類の金額について上限を設けています。
そして、この上限額は、下図のとおり懸賞の対象となる「取引の価額」に応じて決まります。
それでは、サブスクリプション型サービスなど一定期間の継続加入を条件とする懸賞の場合、「取引の価額」はどのように定まるのでしょうか?(月会費、キャンペーン対象の期間の会費、平均継続期間の会費のいずれでしょうか?)

<一般懸賞>
景品類の限度額
取引の価額   最高額      総額
5,000未満   取引価額の20倍  懸賞に係る売上予定総額の2%
5,000以上   10万円      同上

<総付懸賞>
取引の価額   景品類の最高額
1,000円未満  200円
1,000円以上  取引価額の10分の2

取引価額の基礎
「取引の価額」の求め方については、概ね、次の順序で検討できます。
Q 購入を条件とする?
NO  →B
YES →Q 購入額に応じて景品を提供する?
YES→A
NO →B

A=購入額
B=100円。ただし、通常行われる取引の価額のうち最低のものが100円を超えるときは、その最低のものを「取引の価額」とすることができる(*)。

つまり、基本的には「購入額=取引価額」ですが、購入が条件となっていなかったり、購入は条件となっていても購入額で左右されなかったりする場合には、取引価額は100円となります。
但し、最低の取引額が100円を超える場合には、その金額となります。

*購入者を対象とするが購入額の多少を問わないで景品類を提供する場合で取引の価額のうちの最低のものが明らかに百円を下回つていると認められるときは、当該最低のものが「取引の価額」となります。

「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について
(1) 購入者を対象とし、購入額に応じて景品類を提供する場合は、当該購入額を「取引の価額」とする。
(2) 購入者を対象とするが購入額の多少を問わないで景品類を提供する場合の「取引の価額」は、原則として、百円とする。ただし、当該景品類提供の対象商品又は役務の取引の価額のうちの最低のものが明らかに百円を下回つていると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とすることとし、当該景品類提供の対象商品又は役務について通常行われる取引の価額のうちの最低のものが百円を超えると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とすることができる。
(3) 購入を条件とせずに、店舗への入店者に対して景品類を提供する場合の「取引の価額」は、原則として、百円とする。ただし、当該店舗において通常行われる取引の価額のうち最低のものが百円を超えると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とすることができる。この場合において、特定の種類の商品又は役務についてダイレクトメールを送り、それに応じて来店した顧客に対して景品類を提供する等の方法によるため、景品類提供に係る対象商品をその特定の種類の商品又は役務に限定していると認められるときはその商品又は役務の価額を「取引の価額」として取り扱う。

継続契約の場合
継続契約であっても、基本的には先ほどの考え方は変わりません。
例えば、新規会員について「3カ月の継続加入」者を対象に景品を提供するのであれば、購入を条件とし、購入額(3カ月分の会費)に応じて景品類を提供することになりますので、上記のA=購入額=3カ月分の会費が取引価額となります。
なお、取引の価額は税込み金額です。

但し、「取引の実態や契約内容から一定の期間継続的に取引を続けることが前提とされる」場合に、例外的に「取引価額を一定期間の取引価額の合計額で考えることができる」場合があります。
例えば、通常1年程度は契約を継続する取引であれば、1年分の会費を取引価額と考えることができるということです。
もっとも、この例外については、以下の場合には適用できないとされています。
1)契約上特に契約期間の制約がなく
2)取引の実態としてもごく短期間で解約する一般消費者が存在する

2)については、短期間で解約するユーザーがどの程度いれば該当するかなどについて明確な指針は示されていません。
また、この例外のケースとして挙げられているのはクレジットカードの入会者への景品の提供であり、特殊なケースといえますので、一般化することはリスクが高いといえます。

既存顧客の場合
以上は、新規顧客向けキャンペーンについての考え方であり、既存顧客を対象とするものについてはやや異なります。
例えば、入会時には特に告知することなく、1年間継続したユーザーに対して景品類を提供するキャンペーンを考えます。
取引の価額は1年分の会費にも思えますが、本キャンペーンは、あくまで告知後の継続取引を期待して行われるものと考えられます。
よって、この場合の取引の価額は、告知後に発生する通常の取引のうち最低のもの(1か月分の会費)ということになります。

おわりに
以上のとおり、継続契約に関するキャンペーンでも、基本的にはキャンペーンの対象となる取引(〇カ月分の継続加入)の金額が「取引の価額」となります。
もっとも、例外的に、一定の期間継続的に取引を続けることが前提とされる場合に一定期間の取引価額の合計額を「取引の価額」と考えることができることがあります。
但し、この例外が許容されるのは限定的な場面ですので、上記の適用除外への該当性も含めて慎重に検討をすることが必要です。
弊所では景品表示法に関するご相談やご依頼をお受けしておりますので、ご気軽にお問合せください。
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