はじめに
取引先に合併や会社分割、あるいは事業譲渡といった組織再編が生じたとき、どのような場合に覚書等の新たな合意書を締結すべきかを検討することは、リスク管理の観点から重要です。
合併の場合
合併が行われると、消滅会社の一切の権利義務は存続会社に包括的に承継されます。
したがって、取引先が合併した場合、従前の契約は自動的に存続会社に引き継がれ、原則として新たな契約や覚書の締結は不要です。
合併により社名変更がある場合、公式HPやレターなどでいつから社名が変更するかを確認しておくことが必要です。
合併により振込先口座が変更する場合は、ご振込を防止するため、正式なレターによる通知や覚書の締結を求めることが望ましいです。
会社分割の場合
会社分割も、会社法に基づき承継会社に権利義務が移転する仕組みです。分割契約や分割計画に基づき、対象となる事業や契約が承継会社に移転します。
したがって、取引先が合併した場合、従前の契約は自動的に承継会社に引き継がれ、原則として新たな契約や覚書の締結は不要です。
社名・振込先の変更に関する対応は、合併の場合と同じです。
事業譲渡の場合
事業譲渡は、譲渡会社と譲受会社の間で個別に契約を締結し、譲渡対象となる資産・負債・契約等を特定して移転させる手法です。
事業譲渡では、契約上の地位や権利義務は自動的に譲受会社に移転するわけではなく、原則として契約相手方の同意が必要です。
そのため、取引先が事業譲渡を行った場合、従前の契約を継続するためには、譲受会社との間で新たな契約や覚書を締結する必要が生じます。
重要な取引先との契約については、事業譲渡の実行前に同意書や覚書を取り交わすことが実務上不可欠です。
まとめ
このように、合併や会社分割の場合、契約の包括承継が原則であるため、覚書の締結は必須ではありません。
ただし、振込先の変更等を伴う場合は、リスク回避や条件明確化のために覚書を締結することが推奨されます。
他方で、事業譲渡の場合は、契約の個別承継が前提となるため、原則として覚書や新契約の締結が必要です。
特に、取引の継続や条件変更がある場合は、早期に関係者間で協議し、書面で合意内容を明確にしておくことが重要です。
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