コラム

資金決済法/資金移動業

株式会社ARIGATOBANKがリリースした「kifutown」の法律構成は?

はじめに
株式会社ARIGATOBANKが運営する個人間寄付の新たなプラットフォームアプリ「kifutown」が7月24日にリリースされました。株式会社ARIGATOBANKはZOZOの創業者である前澤友作氏が株主として設立した会社で、「kifutown」は前澤氏の「お金贈りプロジェクト」を発展させたものと説明されています。

前澤氏の“お金贈り”がアプリに。個人間寄付「kifutown」開始

「kifutown」(以下「本サービス」)は、寄付をしたい人が寄付プロジェクトを作成、寄付を受けたい人はこれに応募し、抽選を経て当選すれば寄付を受け取れる。当選後に銀行口座を登録し、約2週間程度で振り込まれるとのことです。

「kifutown」の法律構成
寄付に関する法律関係は、kifutown利用規約の次の箇所から確認できます(太字は筆者)。

第2章 寄付プロジェクト
第1節 総則
8.(寄付契約の成立)

寄付プロジェクトの選考(詳細は第12条をご覧ください。)が全て終了し、当社が被寄付者を決定した時点をもって、寄付者と被寄付者それぞれとの間に寄付契約が成立するものとします。
当社は、寄付プロジェクトの公開・応募に関する場(プラットフォーム)の提供および寄付金の供与に関する収納代行サービスの提供を行いますが、寄付契約の契約当事者にはなりません。

このように、本サービスは、「寄付をしたい人」と「寄付を受けたい人」をマッチングするプラットフォームとして構成されています。「寄付をしたい人」と「寄付を受けたい人」は、本サービスの規約に基づいて寄付契約を締結し、寄付を行います。ただし、「寄付」=送金は、運営会社(株式会社ARIGATOBANK)を介して行われます。法律的には、上記8のとおり「収納代行」のかたちをとり、運営会社が「寄付を受ける人」に代わって資金を受け取り、その資金を「寄付を受ける人」へ送金します。

詳しくは利用規約の次の条項に定められています(太字は筆者)。

第2節 寄付プロジェクトへの参加(応募者向け)
13. (寄付プロジェクトの選考)

被寄付者は、寄付契約に基づいて寄付者に対して有する寄付金に関する債権について、あらかじめ当該寄付金の代理受領権を当社に付与するものとします。
当社が、前項の代理受領権に基づいて寄付者より支払われる寄付金を受領した時点で、寄付者の寄付金支払義務の履行が完了したものとします。

このように「収納代行」のかたちをとるのは、資金決済法上の「為替取引」にあたることを避けるためです(為替取引にあたる場合には、資金移動業登録等の資金決済法上の規制が適用されるため)。

収納代行スキーム
もっとも、規約上で収納代行の形式をとっていれば、必ず「為替取引」にあたらないわけではありません。収納代行スキームを用いていても、「割り勘アプリ」のような個人間の送金サービスは、「為替取引」に該当すると解されています。
寄付契約とは贈与契約の一種と解釈されますが、売買等と比較すると原因関係としては弱く、反対債権がなくエスクローの必要性にも乏しいため、個人間の送金サービスと解釈される可能性もあります。規制範囲については、今後公布、施行される令和2年資金決済法改正に係る内閣府令で具体化される予定です(詳しくは、「改正資金決済法と収納代行(2020年12月25日付内閣府令案の公表を受けて)」をご確認ください。)。

おわりに
現段階では、寄付者は募集されておらず(前澤氏のみが寄付者)、今後サービスとして追加されていくとのことですので、「個人間送金サービス」と誤認されることをどのように避けていくか注目していきたいです。

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