利用規約の変更
利用規約の中に、「当社は自由に利用規約を変更できるものとします。」との規定が設けられることは少なくありません。
しかし、このような規定の下利用規約を変更したとしても、変更後の規約にユーザーが拘束されるか、というのはまた別の問題です。
今回は、利用規約の変更の有効性についてみていきます。
契約自体の有効性と変更の有効性
日本の民法においては、契約は原則、申し込みと承諾の合致によって成立します。
例えば売買契約であれば、売り主がある商品を「売ります。」と言ったのに対し、買い主がこれを「買います。」と言うと契約が成立するという具合です。
ウェブサービスにおける利用規約の提供とユーザーによる同意も実はこれと同じもので、提供者の、「この利用規約にしたがったサービスを提供します。」という申し込みと、ユーザーの「この利用規約の内容で利用します。」という承諾が合致し、契約が成立するという仕組みになっています。
契約が成立すれば、その契約の内容は両当事者を拘束することになります。
したがって、利用規約をユーザーに適用するためには、なによりこの申し込みと承諾の合致があるといえることが重要となります。
(なお、ウェブサービス利用開始時の利用規約への同意の取得方法については、本サイトのコラム「利用規約への同意の重要性」をご覧ください。)
契約・規約の変更も基本はこれと同じ話になります。
契約・規約の変更には、変更する部分を含めた契約内容についての申し込みと承諾の合致を要します。
したがって、原則としては、利用規約の変更をしようとするたび、改めて利用規約の変更部分(又は変更後の利用規約全文)を提供し、ユーザーから同意を得なければ、変更後の利用規約をユーザーに適用することは許されないことになります。
利用規約変更の方法
この点につき、2020年4月に施行された改正民法では、548条の4で、明示の同意がなくとも利用規約の変更が認められる条件を定めています。
まず、ユーザーに有利になるように利用規約を変更することは可能です(548条の4第1項1号)。具体的には、利用料金を減額することや、免責条項で定めた運営会社の賠償上限を引き上げる(撤廃する)ことなどが考えられます。
ユーザーに不利になる契約条件の変更であっても、必要性、相当性、合理性等を備えている場合には、利用契約の変更により処理することができます(同項2号)。
具体的には、ユーザーの有害な行為を禁止するために禁止事項を追加することなどが考えられます。
いずれの場合でも、いつから、どのように利用規約が変更するかについて、予めユーザーに周知させなければなりません(同条2項)。特に、ユーザーに不利な規約変更の場合には、事前に周知しなければ無効となってしまいます(同条3項)。
おわりに
ウェブサービスを展開していく上では、利用規約の変更の必要は必ず生じるものです。
変更について同意が得られているかは、ユーザーとの間で紛争が生じてしまった場合に重要になりますから、この仕組みについてもあらかじめ十分に検討しておくことが重要になってきます。
弊所では利用規約に関するご相談やご依頼をお受けしておりますので、ご気軽にお問合せください。