利用規約には、通常、「当社は、本サービスによってユーザーに生じたあらゆる損害について、一切の責任を負いません。」といった条項が定められています。これを「免責条項」といいます。免責条項も、利用規約の一部であり、事業者とユーザーとの間の契約内容となりますので、原則として、規定通りの法的効果があります。
例えば、サーバホスティングサービスを提供する事業者が、レンタルサーバーに格納されたデータを消失した裁判(東京地判平成21年5月20日)があります。この裁判は、事業者が、顧客ではなく、更にその顧客がシステムを提供していた提供先から、データ消失に対する損害賠償請求を受けたというやや特殊な事案です。
この事業者の利用規約には、次のような規定がありました。
「40条(責任の制限)の規定は、本契約に関して被告が契約者に負う一切の責任を規定したものとする。被告は契約者、その他いかなる者に対しても本サービスを利用した結果について、本サービスの提供に必要な設備の不具合・故障、その他の本来の利用目的以外に使用されたことによってその結果発生する直接あるいは間接の損害について、被告は40条(責任の制限)の責任以外には、法律上の責任並びに明示または黙示の保証責任を問わず、いかなる責任も負わない。また、本契約の定めに従って被告が行った行為の結果についても、原因の如何を問わずいかなる責任も負わない。ただし、被告に故意又は重大な過失があった場合には、本条は適用しない。」
これに対して、判決では、次のように述べて、事業者が免責規定を超える責任を負うことはないと判断しました。
「被告は本件利用規約の免責規定を前提として契約者及び契約者の提供先である第三者に対して共用サーバホスティングサービスを提供しており、他方、第三者である原告も上記免責規定を前提として被告の上記サービスを利用していたのであるから、被告は、原告との間で契約を締結していないものの、同原告との関係においても免責規定を超える責任を負う理由はなく、したがって、本件プログラムや本件データの消失を防止する義務を負うとはいえない」
但し、免責条項が常に規定通りの効果を有するわけではありません。その典型的な例は、消費者契約法に反する場合です。
事業者とユーザーとの契約が消費者契約にあたる場合(ユーザーが消費者である場合)、事業者の損害賠償責任を全部免除したり、事業者の故意・重過失の場合に責任の一部を免除する条項は、無効となります(消費者契約法8条1項)。
よって、この場合、免責条項は、消費者契約法に基づき、一部無効となりますので、免責条項として定めたとおりの法的効果を有することはできません。
また、2020年の民法改正で新設された民法548条の2第2項により、社会通念に照らして不当な条項は、利用規約に定めてあっても、合意しなかったものとみなされます。
その他、裁判例では、免責条項を限定的に解釈して、事業者の免責を認めない事例も散見されます。
このように、免責条項は、利用規約には必須の条項といえますが、必ずしも、文言通りの法的効果を有するものではないため、規定内容については、慎重に検討する必要があります。
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