はじめに
契約書や利用規約において頻繁に目にするものに「免責条項」や「賠償額の制限条項」があります。 これらは、事業者が事業活動に伴う潜在的なリスクを管理し、予測不能な多額の損害賠償責任から事業を守るために不可欠なものです。
そもそも、事業者間(B to B)の取引においては消費者契約法の適用はないため、契約自由の原則に基づき、当事者間の合意によって定められた免責条項や責任制限条項は原則として有効です。
しかし、この原則も公序良俗違反等の場合には無効となり、無制限ではありません。
このコラムでは、事業者側に「故意または重過失」が存在する場合に、これらの免責・責任制限条項がどのように扱われるのかを解説します。
故意・重過失の場合の免責は無効とされる傾向
事業者間取引であっても、事業者に故意または重過失がある場合の損害賠償責任まで免除する条項は、公序良俗(民法第90条)や信義則(民法第1条第2項)に反して無効とされるのが裁判例における一般的な考え方です。
特に、責任を完全に免除する「全部免責条項」が故意・重過失の場合にまで及ぶと定められている場合、その有効性が否定される可能性は高いと考えられています。
また、賠償額を制限する「一部免責条項」についても、裁判例では、条項の趣旨等を考慮し、事業者に故意・重過失がある場合にはその適用が及ばない、と解釈されることがあります。
例えば、東京地判平成26・1・23判時2221-71では、故意・重過失の場合には損害賠償を制限する条項は適用されないと判断しています。
実務上の対応
このような裁判例の傾向を踏まえ、事業者間取引で用いられる契約書や利用規約においても、紛争を未然に防ぐ観点から、免責条項に「ただし、当社の故意または重過失による場合を除きます。」といった但し書きを設けるのが一般的です。
まとめ
免責条項や賠償条件条項の有効性は、取引の相手方が消費者か事業者かによって準拠する法律や原則が異なりますが、「故意・重過失」という事業者の重大な帰責事由がある場合においては、その効力が否定されるという点で共通の方向性が見られます。
契約書や利用規約を作成・レビューする際には、これらを正確に理解し、取引の実態に応じた適切な条項を設計することが、将来の法的紛争を回避する上で極めて重要です。
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