コラム

ウェブサービスの利用規約

免責条項の「消費者契約にあたる場合」の例外とはどのような意味か

はじめに
ウェブサービスの利用規約に必ずと言っても良いほど定められているのが「免責条項」と呼ばれる規定です。「免責規定」「免責事項」「非保証」などのタイトルが付けられている場合もあります。この「免責条項」については、「利用規約の免責条項について」にて、裁判例を交えて説明しています。
本稿では、免責条項について消費者契約法の関係で、あらためて説明いたします。

消費者契約とは何か
消費者契約とは何かについては、消費者契約法第2条で定義されています。

第二条 この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
2 この法律(第四十三条第二項第二号を除く。)において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
3 この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。

即ち、消費者契約とは、個人(事業上での場合を除く)と法人を中心とする事業者との間で締結される契約をいい、いわゆるBtoC取引といえます。
利用規約に基づくサービス利用契約も「契約」ですので、これが上記の消費者契約にあたる場合には、消費者契約法が適用されることになります。

消費者契約法と免責条項
免責条項との関係では、消費者契約法第8条の規定が重要です。
本条は、次のように定めています。

(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)(抜粋)
第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項
二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項

即ち、消費者契約にあたる場合、免責条項がサービス提供者の責任について次のように定めている場合には、その免責条項は無効となってしまいます。
1)全部免責とするもの
2)故意・重過失の場合も一部免責とするもの

利用規約での免責条項の定め方
事業者としては、免責の対象を広くとることで、事業上のリスクを最小に抑えたいと考えます。そのため、「一切の責任を負わない」との内容の免責事条項を定めることが少なくありません。
もっとも、このような「一切の責任を負わない」免責条項は、消費者契約法第8条の適用があれば無効となってしまいます。
そこで、多くの利用規約では、免責条項について、
A)原則的には「全部免責」
B)例外的に消費者契約法の適用がある場合でも、○○の範囲でしか責任を負わない
というように、2段階の内容としています。
このため、冒頭のとおり、免責条項に「消費者契約にあたる場合」というような場合分けがされることがあるのです。

2020年民法改正
更には、2020年の民法改正により新設された548条の2第2項により、消費者契約法の適用がない場合でも、社会通念に照らして不当な条項は、利用規約に定めてあっても、合意しなかったものとみなされますので注意が必要です。

おわりに
このように、免責条項を定めるには、消費者契約法への配慮が欠かせません。また、免責条項の適用がない場合に責任を負う範囲(上記の○○の部分)をどのように定めるかは、具体的な事業上のリスクは顧客ニーズ等を総合的に判断して決めることになります。

PAGE TOP