はじめに
代表取締役の辞任手続については、どのような手続で選定されたかによって異なってきます。
以下では、代表取締役の辞任手続について、場合を分けて説明していきます。
〇代表取締役の地位のみの辞任(取締役は辞任しない)場合
1)非取締役会設置会社における代表取締役の辞任手続
非取締役会設置会社では、代表取締役の選定方法により辞任手続も異なります。
A)定款により選定された代表取締役
定款変更(株主総会の特別決議)が必要です。
B)株主総会決議により選定された代表取締役
代表取締役の辞任の意思表示に加えて、株主総会の決議(承認)が必要です。
C)定款の定めに基づく取締役の互選により定められた代表取締役
辞任の意思表示が会社に到達したときに辞任することができます。
A)B)の株主総会決議は、実際に株主総会を開催せずとも、会社法第319条に基づき書面決議(みなし決議)として行うことが可能です。
また、株主の意思表示は、書面による他、電磁的記録によることも可能です。
2)取締役会設置会社における代表取締役の辞任手続
取締役会設置会社では、辞任の意思表示が会社に到達した日に辞任することができます。
3)取締役が各自代表の場合
代表取締役の地位のみを自認することはできません。
〇代表取締役が取締役を辞任する場合
取締役は、民法の委任契約の規定に従い、いつでも自己の意思で辞任することができます(会社法330条、民法651条1項)。
辞任の意思表示は、会社(通常は代表取締役)に対して行います。会社の承諾や株主総会の決議は不要です。
辞任の効力は、会社にその意思表示が到達した時点で発生します。
もっとも、以下の点に注意が必要です。
・辞任によって法令や定款で定める取締役の員数を下回る場合
新たな取締役が就任するまで、辞任した取締役はなお取締役としての権利義務を有します(会社法346条1項)。
この場合、辞任登記は新任取締役の就任登記と同時でなければできません。
・辞任によって代表取締役がいなくなる場合
定款に「取締役が1名の場合にはその者が当然に代表取締役になる」旨の規定がある場合には、残存取締役が選定行為や就任承諾なくして代表取締役となります。
定款に特段の定めがない場合は、代表取締役の退任後、残存取締役の中から新たに代表取締役を選定する必要があります。
まとめ
以上のとおり、代表取締役の辞任手続については、場合を分けて考える必要があります。
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