コラム

ITと知的財産権

他社商標の使用に関する法的留意点や実務上のポイントを解説

はじめに
ビジネスや情報発信の現場では、他社の商標を自社のコンテンツや広告、商品説明などで使用する場面が少なくありません。しかし、商標権侵害や不正競争防止法違反とならないためには、商標の「記述的使用」と「商標的使用」の違いを正確に理解し、慎重に運用することが不可欠です。本コラムでは、他社商標の記述的使用に関する法的留意点や実務上のポイントを解説します。
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商標の「記述的使用」とは何か
商標法上、商標の「使用」とは、商品や包装に商標を付したり、譲渡することなどを指します(商標法2条3項)。
ただし、商標の本質的な機能は「出所識別機能」にあり、商標を出所表示標として使用していない場合、すなわち「商標的使用」に該当しない場合は、商標権侵害が否定されます。
例えば、他社商標を単に商品説明や内容物の表示、書籍の題号、意匠的なデザインなどとして用いる場合は、出所識別標としての機能を果たしていないため、「記述的使用(事実表記)」とされ、商標権侵害に該当しないことが多いです。

記述的使用が認められる主なケース
書籍や記事のタイトル、内容説明としての使用
商品やサービスの内容物、成分、用途などの説明
他社製品との比較や互換性の説明(例:「○○社製品対応」など)
意匠的・装飾的な使用(ただし、出所表示と誤認されないよう注意)
これらの場合、商標が自社や第三者の出所を示すものとしてではなく、単なる事実の説明や内容の表示として用いられていることが重要です。

記述的使用でも注意すべきポイント
記述的使用であっても、使用方法によっては「商標的使用」とみなされ、商標権侵害となるリスクがあります。
例えば、他社商標を自社の提供主体であるかのように表示したり、出所の混同を招くような態様で使用した場合は、商標権侵害や不正競争防止法違反となる可能性が高まります。
また、著名・周知な商標の場合、指定商品・役務以外でも不正競争防止法上の問題となることがあります。

実務上の具体的な留意点
出所の混同を避ける:他社商標を使用する際は、あくまで内容説明や比較、互換性の表示など、事実を明確に伝える目的に限定し、出所表示と誤認されないようにする。
打消し表示の活用:必要に応じて「○○は△△社の登録商標です」などの注記や打消し表示を付すことで、混同防止に努める。
商標の識別力や周知性の確認:使用予定の商標が著名・周知である場合は、より厳格な注意が必要です。

まとめ
他社の商標を記述的に使用する際は、「出所識別機能を害さない」「混同を生じさせない」「事実の説明にとどめる」という原則を徹底し、必要に応じて打消し表示や注記を付すなど、慎重な運用が求められます。商標権侵害や不正競争防止法違反のリスクを回避するためにも、実務上のポイントを押さえ、社内体制の整備や事前調査を怠らないことが重要です。

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