コラム

ITと知的財産権

他社のホームページを真似したホームページは著作権侵害になる?

はじめに、著作権法(以下、「法」といいます。)における著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをい」います(法第2条1項1号)。
また、著作者とは、「著作物を創作する者をい」い、著作物の複製権(法第21条)*1 や翻訳権、翻案権(法27条)*2 等は著作者の専有です。

*1 複製権とは、その方法を問わずに著作物を「形ある物に再製する」ことに関する権利で、例えば、建築の著作物に関しては、その「図面」に従って建築物を作ることも複製に当たります。
*2 翻訳権、翻案権等とは、著作物(原作)を、翻訳、編曲、変形、脚色、映画化などにより、創作的に「加工」することによって、「二次的著作物」を創作することに関する権利です。例えば、英語で書かれたAさんの小説をBさんが日本語に訳して出版するというような場合には、Aさんの了解を得なければなりません。

著作権法の保護の対象となるには、著作者の「①思想又は感情を ②創作的に ③表現したものであつて ④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であることが必要です。真似された部分が単なる事実やありふれた表現である場合には、著作権侵害にはあたりません。

単なる事実やありふれた表現である場合とは、例えば、文化庁のホームページには以下があげられています(文化庁「令和4年度著作権テキスト」5頁)。

① 「思想又は感情」を
「東京タワーの高さ:333メートル」といった「単なるデータ」など(人の思想や感情を伴わないもの)が著作物から除かれます。
② 「創作的」に
他人の作品の「模倣品」など(創作が加わっていないもの)が著作物から除かれます。また、誰が表現しても同じようなものになる「ありふれたもの」も創作性があるとはいえません。
③ 「表現したもの」であつて
「アイデア」など(表現されていないもの)が著作物から除かれます。ただし、アイデアを解説した「文章」は表現されているため著作物になり得ます。
④ 「文芸、学術、美術又は音楽の範囲」に属するもの
「工業製品」などが著作物から除かれます。

では、ホームページというと、文章や写真、イラストに音楽など様々なものが掲載されていますが、他社のホームページを真似したとして著作権侵害を訴えられる場合とはどのような場合でしょうか。

先に述べた通り、著作物というには、「①思想又は感情を ②創作的に ③表現したものであつて ④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であることが必要で、ホームページ上の真似されたものを明確にしなければなりません。

●真似したものが文章の場合
例えば、ホームページ上の掲示板に書き込んだ文章を複製して書籍を作成し出版した事件(こちらのコラム「ウェブ上の掲示板への書き込みの一部に著作物性が認められた事例 」で紹介しています。)では、掲示板に書き込んだ文章についても「筆者の個性が発揮されたものとして、「思想又は感情を創作的に表現したもの」といえるから、著作物性が認められる」との判断がなされています。
この掲示板では、質問・回答等が書き込まれるものでしたが、確認できる限り、いずれも300字を超え、長いものでは1000字を超えており、著作物性が肯定されました。
他方で、「①文章が比較的短く、表現方法に創意工夫をする余地がないもの、②ただ単に事実を説明、紹介したものであって、他の表現が想定できないもの、③具体的な表現が極めてありふれたもの、として筆者の個性が発揮されていないから、創作性を否定すべきである。」として、著作物性を否定された書き込みも相当数ありました。
短い文章であれば、一般に表現の創作性の幅が狭いと考えられており、上記のように、著作物性が否定される場合もあります。これに対し、長い文章であれば、創作性が認められやすいといえます。

●真似したものが写真やイラスト等の場合
写真の場合には、写真の被写体の配置や構図、例えば「虹を想起せしめるグラデーションとなるように」工夫が凝らされている等の一定の工夫がある場合には、創作性が認められる必要があります。
イラストの場合にも、文章と同様に、絵画的なイラストであれば創作性の幅が広く、これが同一であれば、著作権侵害になる場合が多いといえますが、他方で、アイコンのような意味を表したものであれば、創作性の幅が狭く、創作性が認められない可能性もあるといえます。

●真似したものがコンテンツの配置などの場合
ただ単に、配置方法が同一であるというような場合は、表現ではなく、アイデアも真似したに過ぎないので、著作権侵害が認められない可能性があります。
配置されたコンテンツ全体に対して、「①思想又は感情を ②創作的に ③表現したものであつて ④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」といえる場合には、著作権侵害に該当する可能性もありますが、コンセプトやイメージ、色彩等は一般的にこれらには当てはまらないとされています。

以上のように、著作権侵害に該当するかどうかは、具体的な表現を対比しつつ様々な要素を考慮して判断する必要があるといえ、専門家へ相談することも重要です。

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参考
文化庁「令和4年度著作権テキスト 」

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