はじめに
著作権のライセンス契約は、ライセンサー(著作権者)がライセンシーに著作物の利用を許諾し、ライセンシーがその対価を支払う双務契約です。
破産や民事再生といった倒産手続きが開始されると、契約当事者の一方が債務の履行を完了していない場合、破産管財人や再生管財人は契約の解除または履行の選択権を有します(破産法53条、民事再生法49条)。
しかし、著作権ライセンス契約においては、令和2年著作権法改正により、一定の条件下でライセンシーの権利が保護されるようになりましたので解説します。
令和2年著作権法改正によるライセンシー保護
令和2年10月1日以降、著作権法第63条の2が施行され、ライセンシーは自己の利用権発生後に「著作権を取得した者その他の第三者」に対し、自己の利用権を対抗できるようになりました(当然対抗制度)。
破産管財人もこの「第三者」に該当するため、破産手続開始決定前に利用権を取得していたライセンシーは、破産法53条等によるライセンス契約解除を受けることなく、従前どおり著作物の利用を継続できます。
したがって、令和2年10月1日以降に破産手続開始決定がなされた場合、ライセンシーは著作物の利用権を失うという不利益は原則として生じません。
民事再生手続きの場合の留意点
民事再生手続きにおいても、再生管財人は契約の解除または履行の選択権を有しますが、著作権法第63条の2の適用により、利用権発生後のライセンシーは引き続き著作物を利用できます。
ただし、再生手続き中にライセンサーの義務履行が困難となる場合や、契約内容によっては、ライセンシーが期待した経済的利益や事業継続性に影響が及ぶことも考えられます。
著作権法第63条の2の適用範囲
著作権法第63条の2による当然対抗制度は、令和2年10月1日よりも前に締結されたライセンス契約に基づく利用権についても、その著作権が同日以降に譲渡されていれば適用されます。
まとめ
著作権ライセンス契約の契約期間中にライセンサーが破産や民事再生手続きに入った場合、令和2年10月1日以降はライセンシーの利用権が原則として保護されるものの、サポート等の契約上の義務履行や新たな権利者との関係など、実務上の不利益やリスクは依然として存在します。契約締結時のリスク管理と、倒産時の対応策の検討が不可欠です。
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