はじめに
画像を一部改変したり、切除したり、色味を調整したりした場合、それが著作権法上の二次的著作物(翻案)として認められるためには、単なる複製や機械的な変更にとどまらず、創作的な表現が新たに加わっていることが必要です。
二次的著作物(翻案)と認められるための主な要件
二次的著作物とは、既存の著作物に依拠しつつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しながら、具体的表現に修正・増減・変更等を加え、新たに思想や感情を創作的に表現したものをいいます。
最高裁判例(江差追分事件)では、
・既存の著作物に依拠していること
・既存著作物の表現上の本質的特徴の同一性を維持しつつ
・具体的表現に修正・増減・変更等を加えて新たな創作的表現がなされていること
・その結果、接する者が既存著作物の本質的特徴を直接感得できること
が要件とされています。
画像の改変の具体例と判断基準
画像の一部を切除したり、色味を調整した場合でも、単なる機械的な処理や、創作性のない単純な変更(例:単に解像度を下げる、色を白黒にするだけ等)は、二次的著作物とは認められません。
一方で、改変部分に独自の創作的表現が認められる場合(例:色味の調整が芸術的な意図をもってなされ、全体の印象や感情表現に新たな創作性が加わる場合など)は、二次的著作物と評価される可能性があります。
画像の一部を切除した場合も、単なるトリミングや構成要素の削除に創作性がなければ複製にとどまりますが、切除や再構成により新たな表現意図や創作性が加われば二次的著作物となり得ます。
創作性の有無の具体的判断例
例えば、サムネイル画像の作成のように、単に解像度を下げて縮小しただけでは創作性が認められず、二次的著作物とはなりません。しかし、色味の調整や一部の切除が、元の画像の本質的特徴を残しつつ新たな芸術的表現を加えている場合は、二次的著作物となる可能性があります。
裁判例では、商品販促ツールのデザイン画について、レイアウトや配色等の作業にとどまる場合に著作物性が否定された裁判例があります(大阪地裁平成24年1月12日判決)。また、販売チラシ中の表、宣伝文句、説明文言について著作物性を否定した裁判例があります(大阪地判平成31年1月24日・大阪高判令和元年7月25日)。この他、商品画像の著作物性に関して、元写真に対する露出補正やホワイトバランスの調整等は、元写真を忠実に再現するためのものであって、上記工夫の結果、それらが忠実に再現された各被告画像が得られたとしても、その表現自体に何らかの形で個性が表れているとは認められないとする裁判例があります(大阪高判令和6年1月26日)。
まとめ
このように、画像の一部改変、切除、色味調整が二次的著作物として認められるか否かは、「創作的表現の付加」があるかどうかが最大のポイントです。単なる機械的・形式的な変更ではなく、改変部分に独自の創作性が認められる場合に限り、二次的著作物として著作権法上の保護対象となります。
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