はじめに
近年、様々な目的でデータの取引が行われています。では、データやその取引については、どのように理解すればよいでしょうか。
データの取引とは
まず、データは情報にすぎず、形のある「物」ではないため、その「所有権」はありません。
また、データは、特許権や著作権のような知的財産権でもありません(*)。
このため、データについては、「所有権」や「知的財産権」のように、取引の対象となる「権利」がないのです。
よって、データの取引については、「事実上の」データの提供又は開示に関する契約と理解するのが最も適切といえます
*データの内容によっては、著作権等の知的財産権として保護される場合、不正競争防止法上の「秘密情報」として保護される場合もありえますが、非常に稀なため、ここでは省略しています。
データの保持とは
次に、データは「物」でもなく、それについて「権利」もないため、データについて「所有」「占有」という言葉を用いるのは適切ではありません。
このため、経済産業省のガイドラインでは、それらに代わるものとして、データの「保持」という言葉を用い、その意味を「データに対して適法にアクセスできる事実状態」としています。
経済産業省 AI・データの利用に関する契約ガイドライン1.1版
どうやってデータを取引するか
以上のように、データについては「権利」がないため、ほとんどの場合、現実的にそれを使用できる人が使用できるということになってしまいます(無断で使用されても権利侵害を主張できない)。
このため、データを提供・開示する取引をする場合には、契約によって提供・開示先を適切に拘束しなければなりません。
つまり、提供・開示先がデータを目的外に使用したり、第三者に漏洩した場合に、(権利侵害を主張できない代わりに)契約違反を主張できるようにしておく必要があるのです。
おわりに
データは「物」ではなく、「権利」もなく、「所有」「占有」という概念にも馴染まないもので、その取引は売買契約やライセンス契約とは異なる特殊なものです。
よって、取引にあたっては、この特殊性を踏まえて、適切に条件等を契約書に盛り込む必要があります。
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