コラム

システム開発の法律

システム開発が準委任契約とされた5つの判断要素

システム開発契約の法的性質
システム開発契約には、大きく分けて、請負契約型と準委任契約型があります(開発段階によって異なると考えることもできます。)。請負契約とは、「業務の完成」を目的とするものであり、準委任契約とは「業務遂行」そのものを目的とするものです。
契約の法的性質は、必ずしも契約書の表題から決まるものではないため、特定のシステム開発契約の法的性質が争われた場合には、契約書全体の解釈や、契約書外の様々な事情を考慮して、決せられることになります。
裁判で、このようなシステム開発契約の法的性質そのものが争われることは多くありませんが、判決文中でこの点を判断した裁判例(東京地判平成28年4月20日・平成25年(ワ)第11770号業務委託報酬請求事件)がありましたので、紹介致します。

事案の概要
本件は、Yから、ソフトウェア開発を委託されたXが、仕様の追加・変更等により、追加業務が生じたとして、Yに対し、業務委託契約に基づき、上記追加業務の作業量に応じた追加報酬代金及びその遅延損害金の支払を求める事案です。
原告は、追加報酬代金請求の根拠の一つとして、次の事情から、開発委託契約が、作業量に応じて報酬が発生する準委任の性質を有するというべきであると主張しました。
① 被告との間で、報酬について作業量に単価を乗じて計算することを合意していた。
② 本件契約は、契約時点では、完成すべき仕事の内容が確定されておらず、特に、総合試験対応業務については、不具合対応業務の業務量が被告の求めに依存する点で、仕事の完成を観念することができない。

判決の概要
上記の原告の主張に対して、裁判所は、本件の開発委託契約は、業務の完成を目的とする請負契約であったと認定しました。その判断要素として、裁判所は、次の5点を挙げています。
① 本件契約書や原告が提出した見積書には、単価や工数が記載されておらず、上記見積書には「無線LANルータ開発 一式」と記載されていた。
② 本件契約に係る作業期間中も、原告から被告に対し、作業時間の報告等もされていない。
③ 報酬の支払が、成果物の検査合格(検収)という成果物の完成後とされていた。
④ 原告は成果物に関する瑕疵担保責任を負う。
⑤ 原告が本件ソフトウェア開発により作成した成果物の著作権を有し、被告による業務委託料の完済により、同著作権が被告に移転するものと定められ、まず原告が本件ソフトウェア開発における成果物の所有権を取得するとされている。
このうち、①と②は契約書外の事実、③から⑤が契約書に定められた事実です。
ここからは、準委任契約か請負契約かを判断する際に、名実ともに作業量(時間)に応じて報酬が決定しているか(①、②)や、請負契約に典型的な事項が契約内容となっているか否か(③~⑤)が重視されていることが分かります。
また、契約書で定められた事項(③~⑤)が、契約の法的性質の判断に大きく影響していることも分かります。

補足的事項
しかし、請負契約であると認定されたからといって、追加報酬が否定されるわけではありません。本裁判では、次のように判示して、追加報酬を認容しました。
「もっとも、被告自身が、平成23年10月以降、追加の報酬を求めていた原告に対し、見積明細を提示するよう求めたことが認められ、これは、被告自身、本件契約の範囲外の作業か否かを検討した上で、追加報酬を支払うか否かを決める方針を示していたこと、総合試験の対応工数が増加していた際に、a社担当者が原告から契約範疇外であると言われたらどうするかと被告担当者に聞き、被告担当者は、原告と話をする旨述べていること等からすると、本件契約は、本件見積りを行った平成23年7月7日時点で、本件開発計画書及び同年6月6日に納品された基本設計書(以下「本件基本設計書」という。)に記載された範囲の業務の完成を請け負ったものであって、同時点以降、a社又は被告が、上記範囲を超えて仕様の追加・変更があった場合には、本件見積りの範囲外であり、本件見積りの範囲外の作業については、その作業量に対応する相当な報酬を追加で支払う旨の黙示の合意があったと認めるのが相当である。被告は、原告が本件ソフトウェア開発一式を一括で請け負ったのであり、追加で作業が生じたとしても、追加報酬は発生しない旨主張するが、上記のとおり、被告自身が、本件ソフトウェア開発に係る作業であれば常に本件契約の範囲内に含まれると考えていたとは考えられず、被告の上記主張は採用することができない。」
即ち、見積もりの範囲外の作業については、その作業量に対応する相当な追加報酬を請求しうると判断したのです。

おわりに
以上のとおり、システム開発契約の法的性質(請負か準委任か)が、必ずしも報酬請求権の有無を左右するわけではありません。但し、事例によっては、この点が結果に大きな影響を与えることも考えられます。
この点、先ほど述べたとおり、契約の法的性質の判断について、契約書の規定内容が与える影響は大きいといえますので、自社のひな型が、自社の想定している性質を具備しているか否か、今一度注意して確認されると良いと思います。
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