コラム

IT関連の裁判例

インスタグラムへ投稿された画像の転載について引用への該当性が否定された事例

裁判年月日など
東京地判令和4年2月24日付判決

事案の概要
本件は、Xがインスタグラムのストーリー機能を用いて投稿した画像について、氏名不詳者が、これを保存してコメントを付けたうえで、投稿サイトへ投稿した事案です。
Xは、Y(インターネット接続プロバイダ事業等を目的とする株式会社)に対し、いわゆるプロバイダ責任制限法4条1項に基づき、発信者情報の開示を求めました。

本件の争点
●争点1 本件各投稿によるXの権利侵害の明白性
(1) 本件各原画像の著作権がXに帰属するか
(2) 本件各投稿により、Xの著作物に係る複製権及び公衆送信権が侵害されたことが明らかといえるか
(3) 引用への該当性
●争点2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無

争点に対する裁判所の判断
争点1(1)について
「本件画像…は,顔の肌に注意を惹くように撮影された上,顔を服に例えて,顔の手入れの重要性等を訴える内容の文字入れ等が施されたものとなっており,本件原画像…は,本件画像…の体裁や内容等からしてその元となっているものであると認められることからすると,本件原画像…は,その作成者の思想及び感情が創作的に表現されたものであるといえ,著作物性が認められるというべきである。」
「インスタグラムの機能やその利用実態及び本件画像…上に認められるXのアカウントの文字列に鑑みると,本件画像…の元となったと認められる本件原画像…は,Xがインスタグラムのストーリー機能を用いて撮影及び文字加工を施して自身のアカウントに投稿したものと認められ,……,本件原画像…は,原告の著作物であると明らかに認められるというべきである。」

争点1(2)について
「本件各原画像…は,Xの著作物であり,Xにその著作権が帰属するところ,本件投稿…の発信者は,Xが自身のインスタグラムのストーリー機能を用いて公表していた本件原画像…を複製し,これを本件投稿記事…に添付して本件投稿サイトに掲載したことが認められる。したがって,本件投稿…により,Xの本件原画像…に係る複製権及び公衆送信権が侵害されたことが明らかと認められる。」

争点1(3)について
Yは,本件各投稿は適法な引用(著作権法32条)が成立すると主張しているが,それらは,「XのSNS上の投稿を取り上げてそれを批判するとともに,誹謗中傷あるいは嘲笑する性質のものであると認められ,……引用の目的に正当性を認めることはできない。また,本件各投稿記事の体裁は,本件各原画像を複製した本件各画像がその大部分を占めており,かつ,本件各原画像をそのまま複製し,あるいは,そのまま複製したものに丸印を施しているに過ぎない。そうすると,上記のような本件各投稿における写真以外の部分の記載の性質,引用の目的に正当性を認めることができないこと,本件各投稿記事の体裁からして,Xの各著作物(本件各原画像)を引用する合理的必要性は乏しいといわざるを得ず,本件各投稿における本件各原画像の引用が,適法な引用として認められる「正当な範囲」(著作権法32条120 項)を超えることは明らかである。」

争点2について
「上記のとおり,本件各投稿により,Xの本件各原画像に係るXの複製権及び公衆送信権が侵害されたものであることが認められ,Xは,本件各投稿の発信者に対して損害賠償等の請求をする予定であることが認められるから,本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるといえる。」

コメント
インスタのストーリー機能で投稿した画像について、他者が誹謗中傷する意図のもとに保存、加工のうえで投稿サイトへ投稿した事案です。
Y(プロバイダ)から引用への該当性に関する反論がされこれが排斥されている点で、今後の実務の参考となりえます。
なお、同じくインスタグラムのストーリーに投稿された画像に関する裁判例に関して、以下の記事もありますので、ご参考にされてください。インスタグラムストーリー投稿のスクショと転載

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