コラム

インターネットと個人情報

『クレーマー』も開示対象?開示対象外となるポイントを解説

*本コラムは令和4年4月1日施行の改正個人情報保護法を前提にしています。

「保有個人データ」とは、「個人情報取扱事業者が、開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人データであって、その存否が明らかになることにより公益その他の利益が害されるものとして政令で定めるもの以外のものをい」います(法第16条第4項)。
自社にあるデータベース化された個人情報全てが「個人データ」にあたりますが、その中には、発注元から委託を受けて使用している「個人データ」など、自社が保有しない個人データも含まれます。このような個人データは、その会社にとって、その内容を訂正したり、利用を停止するといったことを判断する立場にありません。
よって、個人データのうち、自社が保有する「保有個人データ」のみが、本人からの開示請求等の対象となります。

では、ユーザーから商品クレームに関する問合せ等があり、それをデータベース化している場合において、データベースに、ユーザーの氏名・電話番号及び対応履歴等だけでなく、会社としての所見(例えば、「悪質なクレーマーと思われる」)が記録されているような場合、これらは全て保有個人データに該当し、開示の請求に応じなければならないのでしょうか(「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A 9-9)。

「保有個人データ」から除外されるものについては、個人情報の保護に関する法律施行令(令和4年4月1日施行、以下、「施行令」といいます。)第5条に定められています。

(保有個人データから除外されるもの)
第5条 法第十六条第四項の政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 当該個人データの存否が明らかになることにより、本人又は第三者の生命、身体又は財産に危害が及ぶおそれがあるもの
二 当該個人データの存否が明らかになることにより、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがあるもの
三 当該個人データの存否が明らかになることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあるもの
四 当該個人データの存否が明らかになることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が及ぶおそれがあるもの

不審者や悪質なクレーマー等からの不当要求被害を防止するため、当該行為を繰り返す者を本人とする個人データを保有している場合に、これらのデータは「当該個人データの存否が明らかになることにより、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがあるもの」(施行令第5条第2号)に該当するので、保有個人データには該当しません個人情報取扱事業者等に係るガイドライン(以下、「ガイドライン」といいます。)2-7参照)。
「不審者や悪質なクレーマー等による不当要求の被害等を防止するために事業者が保有している、当該行為を行った者を本人とする個人データ」の他にも、「暴力団等の反社会的勢力による不当要求の被害等を防止するために事業者が保有している、当該反社会的勢力に該当する人物を本人とする個人データ」等についても、保有個人データには該当しません(ガイドライン2-7)。

また、保有個人データに該当する場合であっても、それを開示することにより、事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合には、当該保有個人データの全部又は一部を開示しないことができます(法第33条第2項第2号)。

なお、「著しい支障を及ぼすおそれ」に該当する場合とは、事業者の業務の実施に単なる支障ではなく、より重い支障を及ぼすおそれが存在するような例外的なときに限定され、単に開示すべき保有個人データの量が多いという理由のみでは、一般には、これに該当しないとされています(ガイドライン3-8-2)。
「著しい支障を及ぼすおそれ」に該当する場合について、ガイドラインには以下の事例があげられています。

事例1)試験実施機関において、採点情報の全てを開示することにより、試験制度の維持に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
事例2)同一の本人から複雑な対応を要する同一内容について繰り返し開示の請求があり、事実上問合せ窓口が占有されることによって他の問合せ対応業務が立ち行かなくなる等、業務上著しい支障を及ぼすおそれがある場合
事例3)電磁的記録の提供にふさわしい音声・動画ファイル等のデータを、あえて書面で請求することにより、業務上著しい支障を及ぼすおそれがある場合

個人データの開示請求を受けた際の対応についての記事はこちらです。

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