コラム

ウェブサービスと法律

「体験」を提供するサービスと旅行業法、特定商取引法

はじめに
近年、ビジネスのキーワードとして「体験」が注目されています。ウェブサービスでも、民泊仲介大手のエアビーアンドビーが、「体験」の提供に力を入れており、注目されています。
それでは、このような「体験」を提供するサービスは、旅行業法や特定商取引法の規制を受けるのでしょうか?

旅行業法によって規制される「旅行業」とは?
「旅行業」を営むには、行政の登録を受けなければなりません。では、「体験」の提供は旅行業にあたるのでしょうか?
「旅行業」とは何かについては、旅行業法の第2条に定められています。

第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
一 旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(以下「運送等サービス」という。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為
二 前号に掲げる行為に付随して、運送及び宿泊のサービス以外の旅行に関するサービス(以下「運送等関連サービス」という。)を旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等関連サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等関連サービスを提供する者との間で締結する行為
三 旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
四 運送等サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為
五 他人の経営する運送機関又は宿泊施設を利用して、旅行者に対して運送等サービスを提供する行為
六 前三号に掲げる行為に付随して、旅行者のため、運送等関連サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
七 第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、運送等関連サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等関連サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為
八 第一号及び第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、旅行者の案内、旅券の受給のための行政庁等に対する手続の代行その他旅行者の便宜となるサービスを提供する行為
九 旅行に関する相談に応ずる行為

このように、「運送」を伴わず、「体験」のみを提供するサービスについては、旅行業法の規制の対象ではなく、旅行業法上の登録は必要ありません。

ホストへの特定商取引法の適用可能性
「体験」と希望する人と提供する人(ホスト)のマッチングサービスを考えた場合、「体験」を提供するのはウェブサービスの運営会社ではなく、個人(ホスト)ということになります。
そうなると、ホストは、インターネットを通じて、「体験」というサービスの申込を受けて、これを提供することになりますので、特定商取引法上の「通信販売」にあたる可能性があります。
特定商取引法上の通信販売にあたる場合には、いわゆる「特定商取引法上の表記」をする必要があります。

特定商取引法の対象となる「事業者」とは
特定商取引法の対象となる「販売業者」又は「役務提供事業者」とは、販売又は役務の提供を業として営む者です。この「業として営む」とは、営利の意思をもって、反復継続して取引を行うことをいいます。
営利の意思の有無についてはその者の意思にかかわらず客観的に判断されることとなります。
よって、ホストとしての活動についても、その頻度、サービスの価格、売上高などから「営利の意思をもって、反復継続して行っていると評価される場合には、ホストは「事業者」にあたり特定商取引法の対象となります。

おわりに
このように、「体験」を提供するサービスについては、旅行業法上の登録は必要でないものの、マッチングサービスとして提供する場合には、ホストについて特定商取引法の規制が及ぶ可能性がありますのでご注意ください。

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