コラム

ITと知的財産権

著作権侵害になる?生成AIと著作権の関係

著作権侵害の要件

他人の著作物を、権利者から許諾を得ておらず、権利制限規定にも該当しないにもかかわらず利用した場合は、著作権侵害となります。

著作権侵害の要件として、

① 類似性:「後発の作品が既存の著作物と同一、又は類似していること」
② 依拠性:「既存の著作物に依拠して複製等がされたこと」

の両方を満たすことが必要とされています。

類似性について

類似性があるというためには、他人の著作物の「表現上の本質的な特徴を直接感得できること」が必要とされています。

「創作的表現」が共通していることが必要なため、アイディアや創作性がない部分が共通するにとどまるような場合は、類似性は否定されます。

これまでの裁判例では、以下の点を考慮している例が多く見られます。

・既存著作物との共通部分が「表現」か、あるいは「アイディア」や「単なる事実」か
・既存著作物との共通部分が「創作性」のある表現か、ありふれた表現か

依拠性について

「依拠」とは、「既存の著作物に接して、それを自己の作品の中に用いること」をいうとされています。例えば、過去に目にした既存のイラストを参考に、これと類似するイラストを制作した場合には依拠性があると考えられます。

これに対し、既存の著作物を知らず、偶然に一致したに過ぎない、「独自創作」などの場合は、依拠性はないと考えられます。

これまでの裁判例では、以下の点を総合的に考慮して依拠性を判断している例が多く見られます。

・後発の作品の制作者が、制作時に既存の著作物(の表現内容)を知っていたか
・後発の作品と、既存の著作物との同一性の程度
・後発の作品の制作経緯

他人の著作物を利用したい場合、権利者からの利用許諾を得るのが原則ですが、一方で、権利制限規定が設けられているため、私的使用のための複製(法第30条)、引用(法第32条)、学校その他の教育機関における複製等(法第35条)、非営利・無料・無報酬での上演等(法第38条)等に該当する場合は、権利者から許諾を得ずに著作物を利用しても著作権侵害とはなりません。

生成AIと著作権の関係

まず、生成AIと著作権の関係には、いくつかの異なる段階があり、その段階ごとに検討することが必要とされています。本コラムでは、「AI開発・学習段階」と「生成・利用段階」について文化庁の資料を元にみていきます。

AI開発・学習段階

AI開発・学習段階とは、著作物を学習データとして収集・複製し、学習用データセットを作成、また学習用データセットを学習に利用してAIを開発することをいいます。

まず、著作権法第30条の4では、著作物は、技術の開発等のための試験の用に供する場合、情報解析の用に供する場合、人の知覚による認識を伴うことなく電子計算機による情報処理の家庭における利用等に供する場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において利用することができるとされています。

ここに、AIの開発を行うために著作物を学習用データとして収集して利用したり、収集した学習用データをAIの開発という目的の下で第三者に提供したりする行為も含まれています(文化庁著作権課「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方 (著作権法第30条の4,第47条の4及び第47条の5関係)」令和元年10月24日、34頁)。

「享受」とは、著作物の試聴等を通じて、視聴者等の知的・精神的欲求を満たすという効用を得ることに向けられた行為をいいます。例えば、文章の著作物なら、閲読すること、プログラムの著作物なら、実行すること、音楽・映画の著作物なら、鑑賞することが「享受」といえる行為の例としてあげられています。

AIが学習するために著作物を読む等することは、「著作物に表現された思想又は感情を享受」(法第30条の4)することには当たらないとされ、AI開発のための学習用データとして著作物をデータベースに記録する行為自体は権利制限の対象となると考えられています(文化庁著作権課「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方 (著作権法第30条の4,第47条の4及び第47条の5関係)」令和元年10月24日、10頁)。

よって、AI開発のために著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としていない利用行為は、原則として著作権者の許諾なく行うことが可能です。

これに対して、享受を目的とする行為には、本条は適用されないため、原則通り著作権者の許諾が必要とされます。また、AI開発のために享受を目的としない一方で、それに加えて享受する目的が併存するような場合においても、原則通り著作権者の許諾が必要とされています。

例えば、情報解析用のデータベースの著作物をAI学習目的で複製するなど「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」にも本条の規定の対象とはならないとされています(法第30条の4ただし書)。著作権者の著作物の利用市場と衝突するか、あるいは、将来における著作物の潜在的販路を阻害するかという観点から最終的には判断されるとされています。

生成・利用段階

生成・利用段階とは、AIを利用して画像等を生成すること、また生成した画像等をアップロードして公表、生成した画像等の複製物(イラスト集など)を販売することをいいます。

AIを利用して画像等を生成した場合でも、著作権侵害となるか否かは、人がAIを利用せず絵を描いた場合などの通常の場合と同様に判断されるため、上述の「類似性」及び「依拠性」によって判断されます。

ですので、生成物に既存の著作物との「類似性」又は「依拠性」が認められない場合は、既存の著作物の著作権侵害とはならず、著作権法上は著作権者の許諾なく利用することが可能です。

これに対し、既存の著作物との「類似性」及び「依拠性」が認められる場合には、そのような生成物を利用する行為は、権利者からの利用許諾を得ているか、許諾が不要な権利制限規定が適用される場合のいずれかに該当しない限り、著作権侵害となることが考えられます。

おわりに

プライベートで鑑賞するために画像等を生成することは、権利制限規定に該当するため、著作権侵害にはなりませんが、一方でビジネス等において利用する際には注意が必要です。

既存の著作物との類似していることが判明した生成物については、

① そのまま利用することを避ける
② そのまま利用するために、既存の著作物の著作権者から許諾を得る
③ 既存の著作物とは全く異なる著作物とするため、大幅に手を加える

といった対応が考えられます。

 

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参考

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