はじめに
ウェブサービスの利用規約などで違約金条項を定めることがあります。違約金条項は、A)損害賠償額の予定又はB)違約罰のいずれかの意味を有します。A)損害賠償額の予定とは、当事者間で、契約違反があった場合の損害賠償の額を定め、損害額の立証を要せずに損害賠償請求を可能とするものです(民法420条1項)。これに対し、B)違約罰とは、契約違反に対する制裁として定めるもので、これとは別に損害賠償請求が可能です。
違約金条項は、賠償額の予定と推定されるため(民法420条3項)、特に定めがなければ、違約金条項は、A)賠償額の予定と解釈されます。
それでは、利用規約などで違約金条項を定めるときには、どのようなことに注意すべきでしょうか。
違約金条項の制限となる法令
違約金条項については、次のような法令に基づいて制限される場合があります。
(1) 消費者契約法9条
まず、消費者契約法9条は、ダイレクトに違約金条項を制限しており、制限を超える部分は無効となります。
具体的には、賠償額の予定額が平均的な損害額を超える部分については無効となります(1号)。
また、金銭支払いの遅延損害金について、年14.6%の利率を超える部分も無効となります(2号)。
このように、消費者契約法の規制は非常に厳格ですので、サービスの想定ユーザーを前提に、サービス利用契約が「消費者契約」となるか否かは十分に検討しておく必要があります。
(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
(2) 民法548条の2第2項
次に、民法548条の2第2項は、2020年4月1日に施行された改正民法により新設された条項です。利用規約のような「定型約款」では、「相手方の利益を一方的に害すると認められる」条項は、無効(合意をしなかったもの)とみなされます。
この「相手方の利益を一方的に害すると認められる」の解釈については、概ね、消費者契約法の規制と同様と考えられていますので、さきほどの消費者契約法9条の解釈が参考になります。
よって、消費者契約に該当しない取引であっても、利用規約のような「定型約款」に基づく取引では、過大な違約金条項は無効とされてしまうため注意が必要です。
民法第548条の2
2.前項の規定にかかわらず、同項の上項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
(3) 民法90条
最後に、上記のいずれにも該当しない場合であっても、明らかに不当な違約金条項については、公序良俗違反を理由に一部無効とされる可能性があります。
民法第90条
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
おわりに
このように、利用規約で違約金条項を定める際には、少なくとも消費者契約法9条や民法548条の2第2項に反しないよう定める必要がありますので、ご注意ください。
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