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資金移動業者の取引時確認義務の法的根拠について

はじめに

資金移動業者には、犯罪収益移転防止法により「取引時確認」の義務が課せられています。もっとも、同法は非常に難解であるため、取引時確認義務の法的根拠を条文から導くのは容易ではありません。
よって、本コラムでは、犯罪収益移転防止法とその関係法令のどの条文から資金移動業者に取引時確認義務が課せられるかを解説します。

犯罪収益移転防止法とは

犯罪収益移転防止法とは、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」の略称です。この法律は、いわゆるマネー・ロンダリング対策として定められた法律で、その大きな柱として、「特定事業者」へ本人確認等の「取引時確認」を課しています。
なお、資金移動業者は、同法2条2項30号により、「特定事業者」とされています。

資金移動業者の「特定業務」と「特定取引」

「特定事業者」は、「特定業務」のうち「特定取引」を行うに際して、「取引時確認」を行わなければなりません(法4条1項)。資金移動業者は、資金移動に係る業務が特定業務となります(施行令6条13号)。
そして、資金移動に係る業務のうち、ア)為替取引を継続的又は反復して行うことを内容とする契約の締結(施行令7条1項ナ)やイ)10万円を超える現金での為替取引(同項ツ)が「特定取引」にあたり、「取引時確認」が必要となります。
すなわち、為替取引の基本契約締結の際と、10万円を超える現金での為替取引をする際のそれぞれに、「取引時確認」が必要となります。

確認済み顧客の例外

このように、資金移動業では、本来、ア)基本契約締結の際と、イ)10万円を超える為替取引をする際に、それぞれ取引時確認をする必要があります。もっとも、「確認済み顧客の例外」を利用する場合には、ア)で取引時確認をしていれば、イ)の際にあらためて取引時確認をする必要はありません(法4条3項、施行令13条2項)。
既に取引時確認を行っていることを確認する方法については、施行規則16条に次のように定められています。
(顧客等について既に取引時確認を行っていることを確認する方法)
第十六条 令第十三条第二項に規定する主務省令で定める方法は、次の各号に掲げることのいずれかにより顧客等(国等である場合にあっては、その代表者等又は当該国等(人格のない社団又は財団を除く。)。以下この条において同じ。)が確認記録に記録されている顧客等と同一であることを確認するとともに、当該確認を行った取引に係る第二十四条第一号から第三号までに掲げる事項を記録し、当該記録を当該取引の行われた日から七年間保存する方法とする。
一 預貯金通帳その他の顧客等が確認記録に記録されている顧客等と同一であることを示す書類その他の物の提示又は送付を受けること。
二 顧客等しか知り得ない事項その他の顧客等が確認記録に記録されている顧客等と同一であることを示す事項の申告を受けること。

IT関連などの、非対面取引のサービスでは、2号に基づき、IDとPWなどで本人確認をすることになります。

おわりに

このように、犯罪収益移転防止法は読みにくい法令ではありますが、これを読み解けば、資金移動業者は、少なくとも、顧客との基本契約締結の際に「取引時確認」をしなければならないことが分かります(なお、本コラムではハイリスク取引に関する定めは除外しています)。
頻繁に制度改正が行われる分野でもありますので、制度の構造を把握しておき、まめに条文を確認することが望ましいといえます。