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資金移動業と犯罪収益移転防止法による本人確認義務等

はじめに

近ごろ、個人間の送金・決済に関するサービス・アプリがいくつもリリースされていますが、その多くは、資金決済法(資金決済に関する法律)の「資金移動業」と評価されることを避けて制度構築がされています。このように、サービスが「資金移動業」と評価されることを避ける理由の一つとして、犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)の存在がありますので、本項では、資金移動業と犯罪収益移転防止法との関係についてご説明します。

「資金移動業」とは何か

資金移動業については、「資金移動業登録が必要な『為替取引』とは何か」のコラムでご説明していますので、詳しくは、こちらをご覧ください。
要するに、物理的な方法(書留で現金をおくるなど)以外の方法で送金することを「為替取引」といい、このような為替取引を銀行等以外の事業者が行うには、「資金移動業」の登録が必要となるのです(資金決済法37条)。
資金移動業登録には、高度な組織的整備や財産的基盤が必要とされるため、登録自体のハードルも、相当程度高いといえます。これに加えて、次に述べるとおり、「資金移動業」と評価されることで、犯罪収益移転防止法の規制も受けることになるのです。

犯罪収益移転防止法による本人確認等の義務

本コラムに関連する部分のみご説明すると、犯罪移転防止法は、「特定事業者」が、顧客との間で「特定業務」のうち、「特定取引」を行うに際して、本人確認等を行うことを義務付けるものです(同法4条1項本文)。
本人確認等としては、具体的には、次の事項を確認しなければなりません(同項各号)。
一  本人特定事項(自然人にあっては氏名、住居(本邦内に住居を有しない外国人で政令で定めるものにあっては、主務省令で定める事項)及び生年月日をいい、法人にあっては名称及び本店又は主たる事務所の所在地をいう。以下同じ。)
二  取引を行う目的
三  当該顧客等が自然人である場合にあっては職業、当該顧客等が法人である場合にあっては事業の内容
四  当該顧客等が法人である場合において、その事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるものとして主務省令で定める者があるときにあっては、その者の本人特定事項

資金移動業と犯罪収益移転防止法による義務

資金移動業に関しては、先ほどの「特定事業者」=「資金移動業者」、「特定業務」=「資金移動業に係る業務」となります(同法2条2項30号、同法施行令6条13号)。
そして、資金移動業との関係では、10万円を超える為替取引が「特定取引」にあたります(同法施行令7条1項タ)。
要するに、資金移動業者が、資金移動業として10万円を超える送金を行うと、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認等の義務が課せられることになるのです。本人確認に際しては、運転免許証等の本人確認書類の提示又は送付を受けなければならず(同法施行規則7条)、本人確認等を行った場合には、記録を作成し、これを7年間保存しなければなりません(同法6条)。

おわりに

このように、サービスの仕組みが、「資金移動業」にあたると、資金移動業登録だけでなく、犯罪収益移転防止法による本人確認等の義務も生じてきます。本人確認等のためには、運転免許証等の提示・送付を受ける必要があります。これらは、ユーザーにとってのハードルが高く、ユーザー数増加という目的に対しては、大きな足かせとなってしまいます。
また、本人確認等の記録を7年間保存し続けることは、スタートアップ段階の事業者にとっては、相当程度の負担となりえます。
他方で、形式的に「資金移動業」にあたらない制度構築をしても、サービスをリリースしたあとで監督当局から指摘を受け、サービスの継続が困難となる可能性もありますので、注意する必要があります。
類似のサービスを検討されている事業者様においては、これらの諸事情を検討のうえ、最適な制度構築をして頂きたいと思います。