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Kyashは法律的にどこが画期的なのか

個人間送金手段としてのkyash

2017年4月5日、株式会社Kyashが、個人間の送金アプリ「Kyash」をリリースしました(以下、サービスとしてのKyashを「」付きで「Kyash」とします。)。近年、LINE Payやpaymoなどの個人間での送金・決済手段が話題を集めており、「Kyash」も、その一つといえます。

但し、「Kyash」は、法律的な構成としては、LINE Payやpaymoとは異なる画期的ともいえる方法で個人間送金を可能にしています。本コラムでは、以下で、「Kyash」の法的仕組みをご説明します。

「Kyash」の概要

「Kyash」は、アプリを使って、ユーザー間で送金・請求ができるサービスです。
まず、ユーザー登録をすると、VISAの発行するインターネット専用のクレジットカード(Kyashカード)がユーザーに対して発行され、これがKyash口座となります。
ユーザーは、クレジットカードなどで、Kyashと呼ばれる価値(ポイント)を購入し(以下、価値としてのKyashを「」無しのKyashとします。)、このKyash口座で保有します。ユーザーは、他のユーザーのKyash口座へ、kyashを送金することができます。
自らのKyash口座内のKyashは、kyashカードを通じて(VISAカードとして利用できます。)、お金と同様に利用することができます。よって、イメージとしては、ユーザー間でプリペイドカードの残高を送金し合うサービスと考えるのが、一番近いように思います。

前払式支払手段とは何か

「Kyash」では、ユーザーは、サービス提供者(株式会社Kyash)からポイント(Kyash)を購入し、これをユーザー間でやり取りすることになります。このように、価値(ポイント)を前払いして購入し、これを用いて決済する仕組みを、前払式支払手段といいます。
前払式支払手段としては、商品券やプリペイドカードがもっともイメージしやすいと思いますが、近年では、インターネット上のオンラインゲームサービスのポイントとしても広く利用されています。
そして、このような前払式支払手段には、自家型と第三者型の2つがあります。自家型とは、ポイントを発行者に対してのみ使用できるもの、第三者型とは、ポイントを発行者以外に対しても使用できるものをいいます。
このうち、「Kyash」は、第三者型発行者として、平成29年1月16日に、関東財務局で登録されています。

なぜ前払式支払手段なのか

ここで、なぜ現金でやり取りせず、Kyashと呼ばれるポイントに変換して交換するのかが疑問になるかと思いますが、その答えは、資金移動業の規制にあります。
資金決済に関する法律は、「隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動する」事業(資金移動業)を規制しています。
資金移動業を行うには、行政機関へ登録し、履行保証金を供託しなければなりません。また、そのような登録をしても、扱える資金移動は、100万円以下のものに限られます(資金決済に関する法律第2条2項、同施行令代2条)。
よって、100万円を超える資金移動を事業として行おうとする場合には、資金移動業としては行えません。これが、「Kyash」が現金をそのまま送金するのではなく、ポイント(Kyash)を送金する形式とした理由の一つではないかと思われます。
また、資金移動業では、滞留している資金の100%以上の金額を、履行保証金として供託等しなければなりません(資金決済に関する法律43条)。これに対して、前払式支払手段では、発行しているポイントの未使用残高が1、000万円を超えたときに、その未使用残高の2分の1に相当する金額を供託等すれば足ります(資金決済に関する法律14条)。
「Kyash」では、ユーザーは、送金等を受けたポイント(Kyash)を、すぐに利用するのではなく、次に友人間で割り勘をするときや、物品をインターネット上で購入したりするときまで自らのKyash口座で滞留させておくことが想定されますので、その全額相当を供託等しなければならない資金移動業では、キャッシュフローが厳しくなることが予想されます。これも、Kyashが資金移動業を避けた大きな理由の一つではないかと思われます。

法的規制との関係

「Kyash」の仕組みのほとんどは、資金移動業で「インターネット・モバイル型」と呼ばれるもの、そのものです。
一般社団法人日本資金決済業協会ホームページ
https://www.s-kessai.jp/businesses/funds_transfer_overview.html

よって、このようなビジネスモデルが、「資金移動業」規制の対象となるか否かは微妙な点があったかと思いますが、先ほど述べたとおり、同社は、前払式支払手段(第三者型)発行者としてのみ登録されていますので、対象とはされなかったようです。

今後の展開

「Kyash」の独自性は、移動させる対象を、お金ではなくポイントにしたこと、更にいえば、
原則払い戻し禁止という前払式支払手段の資金決済方法としての弱点を、VISAと提携することで克服したことにあるといえます。
現在、CtoCビジネスが活況を呈しており、その中で、安価・簡易な資金決済方法が求められています。今回、「Kyash」が、このようなかたちで、「資金移動業」規制への突破口を開きましたので、他社による更なる展開が期待されます。